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好酸球性副鼻腔炎

No.4711 (2014年08月09日発行) P.55

近藤健二 (東京大学耳鼻咽喉科講師)

山岨達也 (東京大学耳鼻咽喉科教授)

登録日: 2014-08-09

最終更新日: 2016-10-26

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マクロライド系抗菌薬の少量長期投与と,内視鏡下鼻内手術の導入により慢性副鼻腔炎の治療成績は飛躍的に向上したが,近年,この両者の治療に抵抗する一群の副鼻腔炎がクローズアップされている。
2001年,春名ら(文献1)は,(1)しばしば成人発症型の喘息(非アトピー型)に合併する,(2)中鼻甲介周囲(中鼻道,嗅裂)の両側性多発性鼻茸(嗅覚障害がほぼ必発),(3)副鼻腔病変は篩骨洞中心(ニカワ様の非常に粘度の高い貯留液),(4)末梢血好酸球の増多,(5)摘出鼻茸組織に著明な活性化好酸球浸潤,(6)難治性の中耳炎を合併することがある(好酸球性中耳炎),(7)手術後の鼻茸の再発が多い,(8)再発鼻茸に経口ステロイドが著効する(マクロライド療法に抵抗性),などの臨床的特徴を有する慢性副鼻腔炎に対して,好酸球性副鼻腔炎の疾患概念を提唱した。2010年から厚生労働省の班研究(藤枝班)が開始され,診断基準案が作成された(文献2)。
本疾患に対する治療としては,ステロイドの点鼻と内服,ロイコトリエン受容体拮抗薬などの薬物治療,生理食塩水による鼻洗浄,内視鏡下鼻内手術を組み合わせて行うことが多い。ステロイドの内服にはよく反応するが効果は一時的であり,鼻茸の再発が多い。
病態は,鼻茸中のTh2優位の炎症が特徴とされる。発症メカニズムは,真菌仮説やブドウ球菌のスーパー抗原仮説が提唱されているが,まだ確定的な知見は得られていない。今後の治療法の確立に向けて病態生理の解明が待たれる。

【文献】


1) 春名眞一, 他:耳鼻展望. 2001;44(3):195-201.
2) 藤枝重治, 他:耳鼻臨床. 2013;106(6):477-84.

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