株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

わが国のB型肝炎母子感染予防法の歴史と問題点

No.4706 (2014年07月05日発行) P.59

久保隆彦 (国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター産科医長)

登録日: 2014-07-05

最終更新日: 2016-10-26

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

B型肝炎(HB)キャリアは肝硬変,肝臓癌となる可能性があり,きわめて問題となる。しかも,日本は子ども達への予防接種の注射針の使い回しによって感染が拡大した不幸な歴史を持ち,26~73歳のこのような感染経路のHBキャリアならびにキャリアから母子感染した子ども達を国は補償の対象としている。HB感染経路は水平感染と垂直感染であったが,HB抗原・抗体検査が可能となり輸血感染が回避されたため,垂直感染である母子感染が主な感染経路となった。
日本のHB母子感染予防は,1985年6月から厚生省児童家庭局の補助事業として開始された。対象はHBe抗原陽性妊婦に限定されていたが,1995年3月に事業が健康保険給付に移管された際,HBs抗原陽性妊婦にまで拡大された。
保険医療化HB母子感染予防法に問題はなかったのか。まず,英国と日本以外の先進国におけるワクチン対象は全国民であるが,日本での対象はHBキャリア母体から出生したハイリスク群のみである。さらに,母体血感作予防のHBグロブリンを出生後48時間以内に投与することは国際的予防法と同様であるが,その後のワクチン投与は大きく異なり,生後2カ月,3カ月,5カ月ときわめて変則的であった。
日本における分娩の約半数は一般産科診療所で行われており,産科病院を含めると開業医が約7割を占め,生後1カ月健診を境に小児科へ移行されるためワクチン接種施設が変更となる。したがって,不十分な申し送りによる脱落例も危惧され,ワクチン接種が完遂されないことが心配されていた。

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連求人情報

関連物件情報

もっと見る

page top