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ノロウイルスの不活化

No.4693 (2014年04月05日発行) P.58

大西健児 (東京都立墨東病院感染症科部長)

登録日: 2014-04-05

最終更新日: 2016-10-26

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ヒトに感染するノロウイルス属のウイルスは,培養細胞や実験動物を用いた感染実験ができない。そのため,同じカリシウイルス科に属し,感染実験が可能なネコカリシウイルス(FCV)を用いた不活化実験結果がヒトのノロウイルスに準用されてきた。FCVは消毒用アルコールでは不活化され難いとする報告があり,ヒトのノロウイルスにも消毒用アルコールは無効であろうと推測されていた。しかし,FCVはノロウイルス属ではなくベシウイルス属で,しかも呼吸器に感染する。一方,マウスノロウイルスはヒトのノロウイルスと同じくノロウイルス属に分類され,マウスの消化管に感染し,かつ,感染実験が可能である。このウイルスの不活化に消毒用アルコールが有効であるとの報告がなされるようになった(文献1)。マウスノロウイルスで得られた実験結果がヒトのノロウイルスに適用できるか否かは不明であるが,消毒用アルコールがヒトに感染するノロウイルスの不活化に有効である可能性があり,さらなる検討が望まれる。
厚生労働省(厚労省)はヒトに感染するノロウイルスの不活化に次亜塩素酸ナトリウム(200 ppm以上)や85℃以上で1分以上の加熱を勧めており(文献2),不活化については厚労省の勧めに従うと良いであろう。しかし,厚労省が勧める対応ができない場合には,例外的に,十分量の消毒用アルコールを用いた対応もやむをえないと思われる。なお,ノロウイルスの2次感染防止の基本は,石鹸と流水を用いた手洗いである。

【文献】


1) 清水優子, 他:日環境感染会誌. 2009;24(6):388-94.
2) 厚生労働省[http://www.mhlw.go.jp/topics/syokuchu/kanren/yobou/040204-1.html]

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