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致死的なくも膜下出血の条件とは?

No.4827 (2016年10月29日発行) P.66

坂井信幸 (神戸市立医療センター中央市民病院脳神経外科部長)

登録日: 2016-10-26

最終更新日: 2021-01-06

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  • 発症時刻が明確なくも膜下出血症例の死亡までの平均時間はどの程度ですか。また,くも膜下出血の死亡原因・機序は? 動脈瘤破裂と外傷性との違い,出血の程度・部位と死亡までの時間との相関もご教示下さい。

    (質問者:兵庫県 K)


    【回答】

    脳動脈瘤の破裂がくも膜下出血の原因の大半で,致死的な出血をいきなりきたす場合,すなわち発症時刻が明確な場合でも,死亡に至るまでの時間は様々です。報告によりますが,入院前に死亡10~15%,入院後48時間以内に死亡20~35%と記載した教科書1)があります。同書には,死亡率は病院到着前を含めて約50%,1週間で43%,1カ月で54%,6カ月で57%という記載もあります。代表的な論文によれば,搬送前死亡14%,初回発作に起因する総死亡43%2),発作直後の死亡10%,重篤25%3)とされています。

    死亡に至る機序は,突然大量の動脈性出血が頭蓋内のくも膜下腔に生じるために急激な頭蓋内圧亢進が引き起こされ,脳灌流圧が低下して脳虚血に陥ることが第一です。そのほかにも,髄液の循環が障害されて生じる急性水頭症は,やはり頭蓋内圧亢進の原因になり,また洞性徐脈・頻脈,期外収縮,有名なたこつぼ心筋症などの心臓合併症,神経原性肺水腫などが,交感神経系の過緊張から大量のカテコールアミンが放出されて生じ,致死的な病態を引き起こします。

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