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サイトメガロウイルス(CMV)角膜内皮炎・虹彩炎の診断と治療【PCRによるウイルスDNAの検索が診断に有用】

No.4827 (2016年10月29日発行) P.63

加藤直子 (埼玉医科大学医学部眼科准教授)

小泉範子 (同志社大学生命医科学部医工学科 ティッシュエンジニアリング研究室教授)

登録日: 2016-10-26

最終更新日: 2016-10-25

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  • サイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV)による前眼部の感染症が注目されはじめています。診断の決め手となる検査と,抗ウイルス薬による治療について教えて下さい。特に,抗ウイルス薬は高価な上,長期投与で全身状態への影響が心配です。同志社大学・小泉範子先生にご回答をお願いします。

    【質問者】

    加藤直子 埼玉医科大学医学部眼科准教授


    【回答】

    角膜内皮炎は,角膜の透明性維持に必要な角膜内皮細胞に特異的な炎症を生じる疾患で,進行すると角膜内皮細胞の障害によって水疱性角膜症による重症の視力障害をきたします。従来,単純ヘルペスウイルスが主な原因とされてきましたが,2006年に私たちは,CMVが角膜内皮炎の原因となることを世界に先駆けて報告しました1)。その後,同様の症例がシンガポールや台湾などアジアの国々を中心として相次いで報告されています。アシクロビル治療が効果を示さない難治の角膜内皮炎や,繰り返して角膜移植が必要となる原因不明の水疱性角膜症の中に,少なからずCMV角膜内皮炎の症例が含まれることから,角膜内皮障害の原因疾患のひとつとして念頭に置くべき疾患として注目されています。

    角膜内皮炎では,限局性の角膜浮腫と角膜後面沈着物(keratic precipitates:KPs)が認められますが,特にCMV角膜内皮炎では円形に配列したKPsからなる衛星病巣(コインリージョン)や,角膜移植後の拒絶反応線に似たライン状のKPsを伴うことが特徴です。虹彩毛様体炎や続発緑内障を合併することが多く,ポスナー・シュロスマン症候群と診断されている症例も多く含まれます2)。潜伏感染したウイルスが再活性化されて,角膜内皮細胞あるいは隅角組織などの前眼部組織に感染し,角膜内皮に炎症を惹起するものと推測されますが,病態は不明です。

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