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喘息合併時における鼻アレルギー治療薬の選択

No.4712 (2014年08月16日発行) P.60

岡野光博 (岡山大学医学部耳鼻咽喉科准教授)

登録日: 2014-08-16

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

鼻アレルギーと気管支喘息の合併率は高く,呼吸器内科で喘息への吸入ステロイドに加えロイコトリエン拮抗薬や抗ヒスタミン薬が処方されている場合をしばしば経験します。患者さんが鼻症状の改善を求め耳鼻咽喉科を受診した場合,私自身は鼻噴霧用ステロイドを追加したり,鼻閉が強い場合は下鼻甲介レーザー手術を行います。岡山大学・岡野光博先生に下記を。
(1)追加する治療薬の選択時における留意点。
(2)アレルギー性鼻炎以外の適応症がない抗プロスタグランジンD2(prostaglandin D2:PGD2)・トロンボキサンA2(thromboxane A2:TXA2)薬は喘息症状の改善に有用でしょうか。
(3)このような症例への免疫療法のメリット。
【質問者】
白崎英明:札幌医科大学耳鼻咽喉科准教授

【A】

(1)薬物療法の留意点
まず,鼻症状がアレルギー性鼻炎によるものか,副鼻腔炎などアレルギー性鼻炎以外の疾患が原因となったり合併していないかどうかを調べます。小児ではアデノイドや口蓋扁桃肥大,成人では鼻中隔弯曲症や腫瘍が原因のこともあります。
アレルギー性鼻炎が原因であれば,薬物治療として私も多くの場合は鼻噴霧用ステロイドを追加します。重度の鼻閉を訴えるようであれば,点鼻用血管収縮薬や抗ヒスタミン薬・血管収縮薬配合錠(ディレグラR )を1~2週間併用します。
これらの薬剤での改善が乏しければ,抗PGD2・TXA2薬やTh2サイトカイン阻害薬,ケミカルメディエーター遊離抑制薬への変更や追加を考慮します。ただし,複数の内服薬の処方は保険診療の上で査定を受けることもあるため,注意が必要です。

(2)抗PGD2・TXA2薬の喘息への効果
抗PGD2・TXA2薬(ラマトロバン)は喘息患者のPGD2曝露に伴う気道狭窄を抑制します(文献1)。また気管支喘息の治療薬にTXA2合成酵素薬(オザグレル塩酸塩)やTXA2受容体拮抗薬(セラトロダスト)があるように,抗PGD2 ・TXA2 薬は喘息症状の改善にある程度有用であると思われます。ただし,吸入ステロイドを用いている喘息患者への抗PGD2 ・TXA2 薬の追加効果についてはよくわかっていません。

(3)免疫療法のメリット
発症アレルゲンが確定しているアレルギー性鼻炎症例に対しては,アレルゲン免疫療法(減感作療法)が有効です。喘息にも効果が期待できます。ただし,1秒率が70%未満であるような不安定な喘息患者さんに免疫療法を行うことは,喘息発作やアナフィラキシーなど重度の副反応を誘導する可能性があるので控えます。

【文献】


1) Magnussen H, et al:J Allergy Clin Immunol. 1992;89(6):1119-26.

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