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採血後の青あざの機序

No.4751 (2015年05月16日発行) P.63

川上民裕 (聖マリアンナ医科大学皮膚科学教室准教授)

登録日: 2015-05-16

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

採血後,青あざの残りやすい人がいますが,これはどのような機序によるものでしょうか。採血の技法や採血後の対応によってもあざの程度は異なりますが,そのような原因でなく,あざの残りやすい人に特徴的なメカニズムがあれば,ご教示下さい。 (富山県 T)

【A】

皮膚は表皮(厚さ0.1mm),真皮(厚さ2mm),皮下脂肪織(厚さ10mm)から構成されます。表皮に血管はありませんが,その下の真皮や皮下脂肪織には存在します。採血では,多くは皮下脂肪織に存在する静脈に注射針が挿入され,その陰圧により静脈血が採取されます。採血直後は,微細な損傷が静脈に生じますが,皮膚表面からの圧迫で間接的に損傷静脈を圧迫することで,血管壁の修復機序が働き,損傷はすぐになくなります。また,一過性に生じた微細な静脈損傷から,血液が周辺の組織に漏出しますが,血液の凝固機序が働き,周辺に拡大しません。
上記の血管壁の修復機序や血液の凝固機序がうまくコントロールされない状況が生じると,採血後に青あざが生じます。当然,健常者でも採血時に十分な圧迫を行わないと,採血後の青あざが生じます。
ちなみに,この青あざは,皮膚科用語で紫斑(皮膚での出血を意味する)と呼ばれます。
採血後に紫斑の残りやすい人には,大きく以下の3つの機序が想定されます。
(1)血管壁の修復機序破綻
血管壁が脆いため,採血時の損傷から血管壁が修復できず,過剰な血液が漏出して紫斑が生じる。
(2)血液の凝固機序破綻
血液中の凝固機序に何らかの異常があり,採血時に周辺に漏出した血液が凝固しにくく,周辺に広がり紫斑が生じる。
(3)血管周辺の支持組織破綻
血管を支えている組織が脆くなっていて,採血時の圧迫が十分に損傷血管や漏出血液に伝わらないことで,出血の拡大を止められず,紫斑が生じる。
この原因として,(1)の場合は,加齢や動脈硬化(高血圧,脂質異常症,糖尿病),また(2)では,血小板・血液凝固因子の異常,抗凝固薬や抗血小板薬の投与,ビタミンC・ビタミンKなどの栄養不足,(3)の場合は,加齢やステロイド投与による皮膚の柔軟性をつかさどっている真皮膠原線維や皮下脂肪細胞の劣化,などが挙げられます。
こうした原因の多くは,ほかの検査で異常を察知できます。しかし,病初期やごく軽微な異常では検出されないこともあります。

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