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インターバル速歩の概要と糖尿病治療への効果

No.4739 (2015年02月21日発行) P.65

能勢 博 (信州大学大学院医学系研究科スポーツ医科学講座教授)

登録日: 2015-02-14

最終更新日: 2016-12-12

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【Q】

信州大学大学院の能勢 博教授が開発したインターバル速歩について。糖尿病治療にも有効との話を聞いたが,その根拠も併せて。 (神奈川県 Y)

【A】

インターバル速歩とは,個人が「ややきつい」と感じる早歩きとゆっくり歩き,それぞれ3分間ずつを1セットとし,これを1日5セット以上,週に4日以上,4~5カ月間続ける運動トレーニング方法である。「ややきつい」と感じる運動とは,個人の最大体力(最大酸素摂取量)の70%に相当する強度の運動である。
筆者らは,これまで5400名の中高年者を対象に,その効果を検証した。その結果,体力が10%向上し,それに伴って高血圧,高血糖,肥満の症状が20%,慢性関節痛やうつ症状が50%改善し,医療費も20%抑制された(図1)(文献1~4)。
最近,これらの筆者らの研究結果をもとに,コペンハーゲン大学の研究チームがこのインターバル速歩の糖尿病治療効果を検証した。彼らは,中高年の糖尿病患者を対象として,対照群,持続歩行群,インターバル速歩群の3群に無作為にわけ,4カ月間の介入研究を行った。インターバル速歩群では個人の最大酸素摂取量の70%に相当する強度の早歩きと40%に相当する強度のゆっくり歩きを3分間ずつ,1日60分,週5日,4カ月間実施した。また,持続歩行群では最大酸素摂取量の55%に相当する強度の歩行を同じ時間,頻度で実施した。
その結果,トレーニングの達成率は両群で89%と差がなく,トレーニング中の総エネルギー消費量も両群間で差がなかったが,その効果を見てみると,3群のうちインターバル速歩群でのみ最大酸素摂取量が16%上昇し,体重,内臓脂肪,空腹時血糖値が有意に低下し,皮下で連続測定した日常の血中ブドウ糖濃度の変動も有意に抑制された(文献5)。さらに,糖負荷試験の結果,インターバル速歩群でのみ,血中のブドウ糖減少率,筋肉のインスリン感受性,インスリン刺激による筋肉細胞内情報伝達系が改善された(文献6)。
以上より,インターバル速歩の糖尿病治療における有効性が立証された。
さて,NPO法人・熟年体育大学リサーチセンター(http://www.jtrc.or.jp)は,オムロン ヘルスケア社の協力で,携帯端末対応のインターバル速歩トレーニング用の新型活動量計(i-Walk ProR)を開発し,今年2月中に発売日を発表する予定である。価格は1年間のインターネットによる遠隔型個別運動処方プログラム付きで約3万6000円を予定している。ぜひ,利用して頂きたい。


【文献】


1) Nemoto K, et al:Mayo Clin Proc. 2007;82(7): 803-11.
2) Nose H, et al:J Physiol. 2009;587(Pt 23):5569 -75.
3) Morikawa M, et al:Br J Sports Med. 2011;45 (3):216-24.
4) 能勢 博:「歩き方を変える」だけで10歳若返る. 主婦と生活社, 2013, p1-191.
5) Karstoft K, et al:Diabetes Care. 2013;36(2):228-36.
6) Karstoft K, et al:Diabetologia. 2014;57(10): 2081-93.

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