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すりガラス状陰影の手術時期

No.4730 (2014年12月20日発行) P.61

山口正史 (国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科)

竹之山光広 (国立病院機構九州がんセンター呼吸器腫瘍科医長)

登録日: 2014-12-20

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

すりガラス状陰影(ground glass opacity: GGO)について。3cm以下のpure GGO(p-GGO)のままで一生を終える人はいるのか。もし,p-GGOのままで一生を終える人がいるならば,MIA(minimally invasive adenocarcinoma)の段階でも5年生存率が100%と言われているようなので,MIAに進行してから手術でもよいのか。(鹿児島県 Y)

【A】

CTの普及に伴い,通常の胸部X線写真では指摘することができないGGOが発見される機会が増えている。このGGOを主体とする結節影は肺腺癌の可能性が高いと報告されているが,(1)FDG-PETで有意な異常集積がない場合も多く,画像診断では限界があり,(2)特に結節影が1~2cm未満と小さいものは気管支鏡やCTガイド下生検での組織学的診断が技術的に困難である場合が多く,全身麻酔下の肺切除による診断と治療を要するケースが多いことが実情である。
近年用いられる国際的な組織学的分類では,2cm以下の肺腺癌は,adenocarcinoma in situ(A IS),MIA,invasive adenocarcinoma(IA)に分類されており,この順に組織学的な進行性が高くなることが示唆されているが,この分類は切除標本の浸潤性の部分の大きさで規定されており,予後との相関を示したものではない。また,同様にCTの所見と,この組織亜型の一致性について確立した見解はなく,CTなどの画像診断でGGOについて経過観察が可能か否かなどの方針を決定することは困難である。特にAISやMIAなどが含まれる可能性があるGGOだけの結節影(p-GGO)についても,当科の切除例の検討では約95%が腺癌で,その腫瘍径が大きいほどIAの割合が多かったことがわかっている。
p-GGOの変化は年単位である場合が多いとされ,当科でも数年にわたりCTで経過観察中の患者がいるが,やはりどれくらいの期間変化がないのか確立した見解はない。当科の切除例ではCTのp-GGOが増大したり,結節影の内部にconsolidationが出現し,より肺癌を疑う所見となるまでの期間は平均約20カ月であった。これらの腺癌患者に現時点で術後再発はなく,外科切除による治癒が期待される。また,少数ながらCTによる観察中にp-GGOが縮小・消失する場合もあるため,まず一定期間CTで観察した後に年齢や全身状態を考慮した上で,可能であれば外科切除による診断と治療を検討することが望ましいと考えられる。

【参考】

▼ Suzuki K, et al:J Thorac Oncol. 2011;6(4):751-6.
▼ Yap CS, et al:Eur J Nucl Med Mol Imaging. 2002;29(9):1166-73.
▼ Travis WD, et al:J Thorac Oncol. 2011;6(2): 244-85.

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