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多発肺癌の外科治療

No.5046 (2021年01月09日発行) P.47

髙木雄三 (鳥取大学呼吸器・乳腺内分泌外科)

中村廣繁 (鳥取大学呼吸器・乳腺内分泌外科教授)

登録日: 2021-01-10

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【根治性と残存呼吸機能のバランス】

肺癌罹患率の上昇と画像診断技術の向上により,多発肺癌が発見される機会が増加している。特に喫煙と関係のないすりガラス影主体の多発腺癌も多い。多発肺癌には同時性と異時性があるが,「肺癌診療ガイドライン2018年版」1)では,同一肺葉内結節が認められる場合,cN0であれば手術を行うことが推奨され,多肺葉内結節においても明らかな肺内転移でなければ,手術が推奨されている。異時多発肺癌も耐術能があれば,外科治療が勧められる。

多発肺癌患者は喫煙によるCOPDのために低肺機能であることが多く,多肺葉内結節に対する外科治療では根治性を維持しつつ,最大限の呼吸機能温存を図ることが重要となる。手術適応としては術後予測FEV1.0≧800mL,術後予測%FEV1.0≧40%を用いることが多く,さらにDLcoや運動負荷試験によりリスクを評価する2)。これらの情報に加え,腫瘍の局在(末梢病変か中枢病変か)やC/T比(充実径/全腫瘍径),年齢,併存症,EGFR遺伝子変異の有無なども考慮し,症例ごとに慎重に術式を選択する必要がある。実際には,第一癌に対して肺葉切除,第二癌に対して縮小手術(区域切除,部分切除)を行うことが多い3)。近年は定位放射線治療(SBRT)が進歩しており,第二癌に対するSBRTも選択肢のひとつである。

【文献】

1) 日本肺癌学会, 編:肺癌診療ガイドライン2018年版. 第5版. 金原出版, 2018.

2) Sawabata N, et al:Gen Thorac Cardiovasc Surg. 2015;63(1):14-21.

3) Leventakos K, et al:J Thorac Oncol. 2017;12 (9):1398-402.

【解説】

髙木雄三,中村廣繁  鳥取大学呼吸器・乳腺内分泌外科 *教授

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