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使用期限切れ薬剤投与の責任

No.4711 (2014年08月09日発行) P.66

竹中郁夫 (弁護士)

登録日: 2014-08-09

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

医療機関で,誤って使用期限切れの医薬品を出し,患者が使用した場合,どのような責任が問われるのか(訴訟の場合や行政処分,副作用が出た場合など)。 (東京都 N)

【A】

医薬品は様々な傷病の診断,治療または予防に使用され,その品質,有効性および安全性は厳しく確保されなければならない。そのため,医薬品の製造,流通,使用まで一貫した品質管理が要求され,有効期間や使用期限が定められている。薬事法第14条1項は,医薬品などの製造販売をしようとする者は,厚生労働大臣の承認を受けなければならないことを定め,同条2項は,医薬品などの効能,副作用などの品質,有効性および安全性に関する事項の審査に合格しなければ前項の承認が与えられないとしている。
この薬事法第14条などに基づき「医薬品および医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令」が制定されており,医薬品などの製造管理や品質管理が厳しく定められている。
医薬品などは,時間経過によって有効成分の分解,変性などによる薬効の減少,あるいは副作用の増大が懸念され(有効期間),その性状,品質を保証できる期限(使用期限)が定められている。製造や販売段階で厳しく品質管理を義務づけられている医薬品においても医師が使用期限を遵守して使用しなければ,不良な結果が生じかねない。
刑事的には,使用期限不遵守による医薬品劣化により,患者に傷害や死亡の結果が生じ,この使用期限不遵守の態様が医師の過失によるとみられれば,業務上過失致死傷罪(刑法第211条)として責任を問われる可能性も出てくる。
民事的にも,刑事同様,因果関係と過失が認められれば,不法行為または債務不履行として責任を問われる可能性が出てくる。民事においては,医療訴訟などにおいて適切な医療行為を受ける「期待権」の侵害という理屈で,因果関係を欠いても有責判断が出る傾向にあり,そのような判断が出る可能性もなくはない。
行政処分は,もちろん重大な結果ということは重視されようが,医療の適切な確保という意味で,単に副作用の有無だけでない観点から行政処分が決まる可能性も出てこよう。

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