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エビデンスに基づいた臍ヘルニア圧迫療法の効果と方法【可及的早期に圧迫を開始することが重要】

No.4795 (2016年03月19日発行) P.57

佐々木 潔 (高知医療センター小児外科科長)

登録日: 2016-03-19

最終更新日: 2016-10-25

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【Q】

臍ヘルニアの多くは自然閉鎖することから観察のみ行われてきましたが,圧迫療法の指導料が認められるようになり,これを取り入れる医師が増えてきました。しかし圧迫したからヘルニア門が閉鎖したのか,自然に閉鎖したのか判定できません。臍ヘルニアを無作為に振り分けた前方視的研究もないと思います。そこで,以下について質問いたします。
(1) エビデンスに基づいた臍ヘルニア圧迫療法の効果:自然閉鎖より高率に閉鎖するのか。
(2) 具体的な方法:生後何カ月から,どれぐらいの期間,どのように圧迫するのか(外来通院の間隔,保護者への指導なども含めて)。
以上について,高知医療センター・佐々木 潔先生のご教示をお願いします。
【質問者】
大野耕一:大阪赤十字病院小児外科部長

【A】

臍ヘルニアは,臍帯脱落後から生後1カ月頃に臍部が突出することで気づかれ,生後2~3カ月頃に最大となり,その後縮小していく経過をとることが多く,新生児の約4%に発生し1歳までに約80%が自然治癒する(文献1)と理解されています。2000年頃から臍部を圧迫する積極的な治療が行われています(文献2,3)が,前方視的な研究(文献4)は限られています。
圧迫療法の効果については後方視的な研究がほとんどですが,多くの医師が採用している(文献5)医師が手技を家族に指導し家族が自宅で圧迫を行う方法では,治癒率は87~88%と報告(文献6~8)されています。また,頻回に外来受診を行って医療者が圧迫を行った方法では88%であったとの報告(文献4)がある一方,治療開始時を6カ月未満に限定した研究では99.1%と非常に高率であったと報告(文献9)されています。このことは,臍ヘルニアの圧迫療法において治癒成績を向上させる要点は単に施行者や手技の違いではなく,開始時期にあることを示唆しています。菅沼ら(文献7)は治癒群の開始日齢が非治癒群と比較して有意に早期であったと報告しています。臍ヘルニアを高率に治癒するためには,可及的早期に圧迫を開始することが重要であると考えます。
臍部の突出した状態についての考察では,臍輪内にヘルニア門がある群とヘルニア門がやや頭側に変位した臍上部型の群との比較で,臍上部型は有意に治癒率が低いと報告(文献7,10)されています。また,初診時に突出した臍部の長径が30mmを超える症例では,治癒した場合でも臍輪内に余剰皮膚が残存(文献10)し,いわゆる臍突出症となるため,美容的な意味での手術適応とされることが多くみられます。このことからも,臍ヘルニアがみられた場合,治癒後の形態を良好にする意味でも,突出が大きくなる以前に可及的早期の圧迫開始が求められます。
治療法の詳細は,文献6をご参照下さい。外来で行っている方法を写真付きで詳しく解説しています。この治療法は,開始後20年近く手技も使用材料も変更しておらず,安定した方法と考えています。

【文献】


1) 堀 隆, 他:臨外. 1979;34(6):1044-8.
2) 佐々木 潔, 他:小児科. 2002;3(10):1482-6.
3) 大塩猛人, 他:日小外会誌. 2002;38(5):768-74.
4) 平岡政弘:日小児会誌. 2014;118(10):1494-501.
5) 大塩猛人, 他:日小外会誌. 2011;47(1):47-53.
6) 佐々木 潔:小児内科. 2011;43(増刊):897-9.
7) 菅沼理江, 他:小児外科. 2014;46(8):841-6.
8) 金田 聡, 他:日小外会誌. 2006;42(4):459-63.
9) 大塩猛人:小児外科. 2012;44(4):389-94.
10)佐々木 潔, 他:小児外科. 2008;40(12):1357-60.

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