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一括法で何が変わる?(1):病床機能報告制度と地域医療ビジョン─2025年に向けた医療提供体制改革の柱に

No.4707 (2014年07月12日発行) P.12

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-03-28

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団塊世代が後期高齢者になる2025年を見据え、医療・介護のあり方を見直す「一括法」が6月18日成立した。法律の施行で何が変わるのか。医療分野で実施される新制度をシリーズで紹介する。

一括法の正式名称は「地域における医療及び介護の総合的な確保を推進するための関係法律の整備等に関する法律」。医療法、介護保険法などを一体的に改正し、医療・介護提供体制を段階的に改革する。

8年ぶりに改正された医療法の柱が、病床機能報告制度の創設と地域医療構想(ビジョン)の策定だ。高齢化による医療需要の増大を見据え、医療機能の分化・連携を進めて医療資源を適切に配分するための仕掛けとして創設された。

病床機能情報は国民にも公開

今年10月からスタートする病床機能報告制度は、全国の医療機関が病床の医療機能の現状と方向性を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」の4区分から1つ選択し、病棟単位で都道府県に報告するもの。さらに、構造設備・人員配置と、入院患者の状況や手術の実施状況など提供している医療内容も報告する。都道府県はこの情報を国民に公開するとともに(公開方法は未定)、2025年の医療需要の将来予測と合わせて、2025年に目指すべき医療提供体制を「地域医療構想」として策定。2013年度からスタートした第5次医療計画に反映する。

構想は、「地域医療構想区域」ごとに作成され、区域は省令で定められる。概ね二次医療圏と一致する見込みだが、受療者の流出入が激しい都市部では複数圏域をまたぐ形も想定される。厚労省は今年度中に構想策定のためのガイドラインを作成する方針。

都道府県の権限強化、医療機関にペナルティも

構想を実現するための「協議の場」を都道府県が設置することも決まった。医療関係者や医療保険者などが参加し、地域で必要な取り組みを協議。ただ、関係者の協議だけでは医療機能の分化・連携が進まない場合、都道府県知事が医療機関に「指示(公的医療機関)・要請(民間医療機関)」の措置を講ずることもできる。

「協議だけで機能分化が進まない」例として厚労省は、「地域の医療需要から新たな急性期病床は必要ないのに、急性期病床の新設や転換をしようとした場合」などの事例を想定。指示・要請に医療機関が従わなかった場合に都道府県は、「医療機関名の公表」「補助金交付や福祉医療機構の融資からの除外」「地域医療支援病院・特定機能病院の不承認・取り消し」というペナルティを科すこともできる。

こうした都道府県の権限強化について、厚労省の原徳壽医政局長は国会審議の中で「最終手段として懐に武器を忍ばせている。実際に使うことを想定しているわけではない」と説明。また田村憲久厚労相も「実際にそれ(ペナルティ)を使うと地域医療が壊れる」と危惧し、あくまでも関係者の協議が機能分化の基本であると強調する。

904億円の基金を創設、機能分化に財政支援

機能分化・連携の実現に向けて、財政支援策も医療法に盛り込まれた。各都道府県に消費税増税分を財源にした総額904億円の基金を創設。医療機関の施設・設備投資も財政支援の対象となる。都道府県は9月中に事業計画を厚労省に提出、11月に交付されるスケジュールだ。なお、基金は「在宅医療・介護サービス」「医療従事者確保・養成」も対象事業で、今年度は医療、来年度から介護も対象とする。

2025年に向けた医療提供体制改革は、地域の実情をよく知る医療関係者がこれらの新制度を活用し、主体的に “地域医療づくり”に参加するかどうかが、成否を握ると言っても過言ではないだろう。
(本シリーズは随時掲載します)

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