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敗血症性DICの治療開始のタイミングや注意点

No.4764 (2015年08月15日発行) P.61

丸藤 哲 (北海道大学侵襲制御医学講座救急医学分野教授)

登録日: 2015-08-15

最終更新日: 2016-10-18

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【Q】

近年,自然免疫による感染防御機構として,細菌を閉じ込めるために血栓ができる免疫血栓(immunothrombosis)の概念が注目されています。重症敗血症などの病態における播種性血管内凝固症候群(disseminated intravascular coagulation:DIC)では,免疫血栓の関与が考えられていますが,この見地から,敗血症性DICの治療は,細菌を拡散させる可能性はないのでしょうか。
敗血症性DICの治療開始のタイミングや注意点を,北海道大学・丸藤 哲先生にご教示願います。
【質問者】
西田 修:藤田保健衛生大学医学部麻酔・侵襲制御医学 講座主任教授/集中治療部部長

【A】

感染局所へ白血球(好中球・単球)が集積し活性化します。活性化白血球は組織因子を産生し凝固亢進を引き起こすと同時に,凝固制御機構(組織因子経路インヒビター,トロンボモジュリン)抑制と線溶抑制(plasminogen activator inhibitor-1:PAI-1)により,効率よくフィブリン血栓を形成します。
近年,このフィブリン血栓が,細菌を感染局所(血栓内)に封じ込め,全身播種を防ぐと同時に好中球が効率よく殺菌を行う場を提供する役割を持つことが知られるようになりました。これを免疫血栓と呼びますが,重症感染症(敗血症など)ではこの均衡が崩れ,細菌が全身へ逸脱し播種性フィブリン血栓形成,すなわちDICが起こります。
重症敗血症に合併するDICでは,治療開始の時期選択が重要です。DIC発症前の早期治療は免疫血栓形成を抑制し細菌の全身逸脱を助長する可能性があり,逆に治療が遅れるとDICによる臓器不全発症を促進する可能性が出てきます。
日本救急医学会「急性期DIC診断基準」(文献1) は,DICの早期発見と治療開始を目的として作成されました。重症敗血症で同診断基準を満たす患者は高率に多臓器不全を合併し,その死亡率は非DIC患者の約2倍となることが証明されています。また,急性期DIC診断基準のDIC診断特性は繰り返してスコア算出を行うことにより有意に上昇します。
以上を考慮しますと,重症敗血症では,急性期DIC診断基準スコアを毎日算出し,診断基準を満たした時点(スコア4点以上)でDIC治療を開始するのが理にかなっているでしょう。

【文献】


1) 丸藤 哲, 他:日救急医会誌. 2007;18(6):237-72.

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