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熊本地震から2カ月 [お茶の水だより]

No.4808 (2016年06月18日発行) P.15

登録日: 2016-06-18

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▼熊本地震の発生から今月14日で2カ月になる。先週号では2日に開催された、日本精神神経学会学術総会の熊本地震を巡る緊急企画の模様を掲載、被災した医療機関の生の声をようやくお届けすることができた。熊本県で精神科病院や関連施設を経営する犬飼邦明氏(益城病院理事長)の講演からは、自ら被災しながらも職務に当たる医療従事者の苦労が伝わってきた。
▼益城病院は前震翌日の4月15日にはすべての入院患者199名を退転院させ、18日から避難先で外来を再開。4月20日には訪問診療を、5月1日には病院での外来を開始した。犬飼氏は折に触れ職員に対してメッセージを発信。発災から1週間後の4月21日には、職員の給与を3カ月間保証すると発表し、5月半ばに入院機能を再開しようと呼び掛けた。この理由について犬飼氏は「医療従事者にとって、本来の仕事をしないで後片付けなどをすることはストレス。方向性を見失った職員に目標を示す必要があった」と説明する。同病院は仮設の給排水の完成を受け、5月11日には3名の入院患者受け入れにこぎ着けた。
▼もっとも益城病院は建物の基礎に大きなダメージを受けており、同規模の地震が再び起これば安全とはいえない状態だという。犬飼氏は「何かあれば避難できる状態を確保しながら患者を診ているが、果たしてこれでいいのか毎日揺れ動いている」と講演の終盤に現在の心境を語った。
▼熊本地震の被災地は災害医療の「慢性期」に入る。東日本大震災の経験を踏まえれば、被災者のメンタルヘルスケアなど精神科医療のニーズは高まることが予想される。今後、被災した地元の医療機関にさらなる支援が必要だろう。

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