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高額療養費制度見直しへ議論本格化 - 70歳以上の限度額引上げ、外来特例廃止が論点 [医療保険制度改革]

No.4813 (2016年07月23日発行) P.9

登録日: 2016-07-23

最終更新日: 2016-12-09

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【概要】社会保障審議会医療保険部会が高額療養費制度と後期高齢者医療制度の見直しに向けた議論を本格化させる。政府の『経済・財政再生計画』の改革工程表では、高額療養費制度について今年度末までに結論を得るとされており、70歳以上の限度額引上げなどが検討のポイントになる。

政府の『骨太方針2016』は国民皆保険制度の持続可能性を高めるため、社会保障分野44項目について『経済・財政再生計画』改革工程表に基づき、見直しを求めている。14日の医療保険部会では負担の公平化に向け、高額療養費制度と後期高齢者の自己負担のあり方を巡る議論がスタートした。特に高額療養費制度については今年度中に結論をまとめる必要があり、急ピッチで検討が進められることになる。

●日医・横倉会長も引上げに一定の理解
高額療養費制度は医療の高度化などの影響を踏まえ1973年に創設。月ごとの限度額を超える自己負担部分について保険者から事後償還される仕組みだ。限度額は被保険者の年齢と所得に応じて区分され、70歳以上には外来の限度額が別途設定。例えば、70歳以上の外来負担は最大4万4000円で済み、世代間格差が指摘されている。厚労省の資料(表)によると、同制度における75歳以上と75歳未満の1人当たり支給額の差は約23.6倍となっている。
高額療養費制度見直しを巡る主な論点は、(1)70歳以上の自己負担限度額引上げ、(2)外来特例の廃止─の2つ。(1)については、社会保障制度改革国民会議報告書などを踏まえ14年度に実施された見直しでも据え置きとなった経緯があり、財務省は負担限度額を現役世代と同水準まで引き上げることを求めている。医療保険部会でも望月篤委員(経団連)が来年度からの引上げ実施を強調。保険者団体の委員からも引上げを求める声が上がった。
一方、日本医師会の横倉義武会長は13日の会見で、この問題に言及。低所得者対策の重要性を強調した上で、「資産評価など高齢者の負担のあり方については議論を進めていかなくてはいけない」と一定の理解を示した。なお、現行区分で現役並み所得者に分類される75歳以上の人数は102万人に上る。

●保険料率引上げで後期高齢者を支える構図
「18年度末までに結論を得る」とされているのが後期高齢者医療制度の自己負担について。同制度は公費5割、現役世代からの支援金4割、残りが後期高齢者の保険料という財源構成になっている。協会けんぽや健康保険組合の支出の4割程度が支援金として充当されており、度重なる保険料率の引上げにより高齢者医療を支えているのが現状だ。現役世代が納得できる制度への見直しがポイントとされ、原則1割の自己負担を70~74歳と同水準の2割に引き上げるかどうかの検討が行われることになる。

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