高額療養費制度の在り方に関する専門委員会は9月16日、今後の議論の進め方に関する事務局案を了承した。専門委員会は今後、見直しの各論の議論に入るが、現役世代の保険料負担への配慮や給付と負担の見直しといった医療保険制度全体の制度設計に絡む課題も多い。このため、医療保険制度改革全般を議論する社会保障審議会医療保険部会と連携・役割分担しつつ、議論を重ねていく方針を確認した。
厚労省は、2回にわたって実施した関係者のヒアリングやこれまでの議論について、①高額療養費制度がセーフティネット機能として患者になくてはならない制度であり、今後も堅持していく必要性がある、②高齢化の進展や医療の高度化、高額医薬品の開発などが今後見込まれる中、現役世代の保険料負担抑制の観点から制度改革の必要性は理解するが、その際には高額療養費制度だけでなく、医療保険制度改革全体の中で全体感を持って議論していく必要がある―という点では委員の認識が一致していると整理。
その上で、(1)高額療養費制度における給付と負担のあり方、(2)制度見直しの際に留意すべき点、(3)現行制度における運用面を含む課題への対応―の3項目を今後の検討課題に位置づけた。
(1)では、低所得者や長期間継続して治療を受けている患者の負担への配慮措置や、高額療養費制度における応能負担のあり方などが論点であり、前者に関しては患者負担に年間上限を設ける提案も出ている。(2)では、自己負担限度額を引き上げた場合に、限度額に到達しなくなったために多数回該当の対象外となり、負担が急増するケースなどへの対応の検討が求められる。(3)では、現行制度において加入する保険者が変わった場合に多数回該当のカウントが引き継がれないことなどが問題視されている。
同日は複数の委員から高額療養費制度単体ではなく、医療保険制度改革全体の議論を踏まえた上で検討を進めていく必要があるとの意見が改めて挙がり、厚労省が、「医療保険部会で全体感を持った議論を今後行っていく必要があり、その状況を適宜、専門委員会に報告することになる」と説明した。厚労省に議論のたたき台となるような素案の提示を求める意見もあった。