厚生労働省は5月24日、「かかりつけ医機能が発揮される制度の施行に関する分科会」に、かかりつけ医機能報告の報告事項等の具体案を提示した。慢性疾患患者に対する日常的な診療などの機能(1号機能)の報告事項では3案を提示したが、症状別と診療領域別のどちらで報告を求めるかで、構成員の意見が割れた。
厚労省案によると、報告対象は特定機能病院と歯科医療機関を除く、病院・診療所とする。報告事項の一部は医療機能情報提供制度の項目にも位置づけ、国民・患者の医療機関選択に役立てることから、同制度と同時に報告が行えるように報告時期は毎年1〜3月とする。
報告するかかりつけ医機能は、改正医療法の規定に基づき、1号機能(継続的な医療を要する者に対する発生頻度が高い疾患に係る診療その他の日常的な診療を総合的かつ継続的に行う機能)と2号機能(時間外診療や在宅医療の提供、介護との連携など)―の2つに大きく分けられる。
1号機能として何を報告するかについて、厚労省は3案を提示した。
案1は、臨床研修の到達目標で経験すべきとされている症状・病態・疾患35項目のうち、必修項目(不眠、浮腫、発熱、頭痛、めまい、視力障害・視野狭窄、胸痛、腹痛、四肢のしびれ、排尿障害など20項目)以上の症状に対して一次診療を行うことができることを報告事項とする。
案2は、(1)報告事項等を院内掲示で公表していること、(2)かかりつけ医機能に関する研修修了者または総合診療専門医がいること、(3)17の診療領域[注](または案1の35の症状)ごとの一次診療の対応可能の有無、いずれかの診療領域について一次診療を行うことができること、(4)17の診療領域(または35の症状)ごとの患者からの相談の対応可能の有無、いずれかの診療領域について患者からの相談に応じることができること。
さらに案3は、案2の(1)の院内掲示での公表に加え、(2)かかりつけ医機能に関する研修修了者・受講者・総合診療専門医の有無(該当者がいなくとも報告をしていればよい)の2項目。
3案ともこのほか共通の報告事項として、医師数、外来看護師数、全国医療情報プラットフォームの参加状況などが挙げられている。
案1は20項目以上の症状について「一次診療を行うことができること」までを求めており、案2の診療領域(または症状)ごとの「一次診療の対応可能の有無」「患者からの相談の対応可能の有無」の要件よりも厳しい内容。
いずれの案も、すべての要件を満たせば「1号機能を有する医療機関」として2号機能の報告を行うことができる仕組み。2号機能は、①時間外診療、②在宅医療の提供、③入退院時の支援、④介護との連携―の4機能について、それぞれ複数の報告事項を設定。厚労省は、いずれの機能についても、該当する報告事項が1つでもあれば「当該機能有り」とする案を示した。
分科会では、1号機能について、保険者や学識経験者の構成員は案1を支持した。一方、患者代表や医療提供側の構成員は案2を支持しつつ、(2)については、「総合診療医等がいることを要件にするのではなく、有無の報告だけでよいのではないか」との見方を示した。
また、案2の(3)(4)について、患者代表の構成員は「症状」での報告を求めたのに対し、医療提供側の構成員は「診療領域」での報告を主張し、大きな争点となっている。
[注]皮膚・形成外科、神経・脳血管、精神科・神経科、眼、耳鼻咽喉、呼吸器、消化器、肝・胆・膵、循環器、腎・泌尿器、産科、婦人科、乳腺、内分泌・代謝・栄養、血液・免疫系、筋・骨格系及び外傷、小児―の各領域