急性糸球体腎炎は,慢性糸球体腎炎に対比して使用される用語である。一般に上気道炎などの感染後に一定の潜伏期を経て,顕微鏡的血尿(時に肉眼的血尿)・蛋白尿を伴い,浮腫,高血圧,腎機能低下を呈する急性腎炎症候群で発症する,感染後急性糸球体腎炎(post-infectious acute glomerulonephritis:PIAGN)を指す。なお,その多くは溶連菌感染後急性糸球体腎炎(post-streptococcal acute glomerulonephritis:PSAGN)である。過去30年間で感染症に伴う糸球体腎炎の疫学に大きな変化がみられ,小児期の予後良好なPSAGNが減少し,合併症を伴う高齢者の腎炎が増加してきた。このような症例は,しばしば予後不良で腎炎発症時に感染が終息することなく進行中であることが多いため,より広く感染関連糸球体腎炎(infection-related glomerulonephritis:IRGN)と総称されるようになってきた1)2)。
PIAGNの診断のポイントは,先行感染後に潜伏期を伴って急性腎炎症候群で発症すること,検査では一過性の低補体血症が必発であること,である。一方,糖尿病など背景疾患を有する高齢者に,ブドウ球菌感染を病因として発症する糸球体腎炎は,糸球体にIgA優位の沈着を伴うことからIgA優位沈着性IRGN(IgA-IRGN)と呼ばれるが,しばしば先行感染や潜伏期などが不明確で,補体低下を認めない症例も多い。
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