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成人成長ホルモン分泌不全症[私の治療]

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  • ▶治療の実際

    一手目 :daily GH(ソマトロピン)製剤:ノルディトロピンS注,またはジェノトロピン注,またはグロウジェクト注,またはヒューマトロープ注,またはソマトロピンBS「サンド」シュアパル注(就寝前に自己皮下注)連日

    daily GH製剤の場合,成人では少量(3μg/kg/日)から開始し,臨床症状,血中IGF-Ⅰ値をみながら4週間単位で増量する。副作用がみられず,かつ血中IGF-Ⅰ値が年齢・性別基準範囲内に保たれるように,適宜増減する。高齢者ではより少量から開始する。男性・閉経後女性0.1~0.3mg/日,閉経前女性0.2~0.4mg/日(特に経口エストロゲン製剤服用中),高齢者0.1mg/日から開始すると副作用が出にくい。


    一手目 :長時間作用型GH製剤:ソグルーヤ注(ソマプシタン)(就寝前に自己皮下注)毎週1回

    少量から投与し血中IGF-Ⅰ値をみながら用量を調節するが,通常は1.5mg/週,60歳以上では1.0mg/週,経口エストロゲン製剤服用中女性では2.0mg/週から開始する。IGF-Ⅰ値は注射2日後に頂値,3~4日後に平均値をとるので,一般的には3~4日後のIGF-Ⅰ値の正常化を目安にするが,臨床症状等の改善の効果も合わせて判断する必要がある。

    ▶偶発症・合併症への対応

    副作用として,体液貯留作用に関連する手足の浮腫,関節痛,筋肉痛などがみられることがあるが,その多くは減量あるいは継続中に消失する。また,耐糖能の悪化について注意する。

    治療効果について,血中IGF-Ⅰ値,体組成・肝機能・代謝障害・QOLの改善などを評価する。合併する性腺機能低下症に対する経口エストロゲン製剤服用中は,より大量のGHが必要となるので,可能な限り貼付薬に変更することが望ましい。活動性のある悪性腫瘍が合併している場合には禁忌である。GH補充療法によって原因となった間脳下垂体腫瘍の再発や増大のリスクを示すエビデンスはないが,腫瘍の良悪,術後の状態やGH分泌不全症による合併症に対する緊急性等をふまえて治療のタイミングを考慮する。

    ▶非典型例への対応

    自覚症状の改善が認められなくても,パートナーなど同居者が改善を感じていることがある。毎日の自己注射が難しい場合には長時間作用型を用いる。

    ▶患者への説明のポイント

    成人においてもGHは必須のホルモンであり,補充によって症状,合併症の改善が期待できる。

    【文献】

    1) 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン作成委員会, 他, 編:日内分泌会誌. 2023;99(S. July): 1-171.

    高橋 裕(奈良県立医科大学糖尿病・内分泌内科学講座教授)

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