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問題点と増加への対応で意見交換 - 日医・救急災害医療担当理事連絡協議会 [高齢者の救急搬送]

No.4718 (2014年09月27日発行) P.5

登録日: 2014-09-27

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【概要】救急医療の課題を議論する日本医師会の会合で、増加が続く高齢者の救急搬送が焦点となり、独居者・施設入居者の搬送を巡る問題点や対応策で意見交換が行われた。


救急搬送に占める高齢者の割合は、2011年には50%を超えた。高齢者の搬送事例の80%以上を軽症・中等症が占める一方で、独居・施設入居で胃瘻造設を受けている者が受入困難となるケースも増加している。
18日に開かれた日本医師会の都道府県医師会救急災害医療担当理事連絡協議会には、厚生労働省と総務省消防庁の各担当官も出席し、高齢者の救急搬送を巡る問題と対応を巡り、意見交換が行われた。

●救急医の勤務環境改善も課題
石井正三常任理事は、増加する高齢者救急に対応するには、「急性期病床の適正配置を含めた政策に現場の声を反映する必要がある」と述べ、地域のメディカルコントロール協議会に医師会が参加するなどして、意見集約の場として活用するよう呼びかけた。
厚労省に対しては、「行政は空床を確保せよと言うが、1人当直ではとても無理だ。24時間365日の体制を円滑に回すには、常時2人以上が救急対応できるようにし、5人以上の医師で当番を組むのが理想的だ」として、救急医の勤務環境改善への配慮を求めた。
これに関連して岡山県医の松山正春理事は、軽症・中等症の施設入居者が三次救急に搬送されやすい現状を指摘しながら、「救急を地域で完結する意味でも、誤嚥性肺炎のような中等症までは一次・二次で受け入れるべきだが、一次・二次に5人以上の医師を置くなど、現状では絵に描いた餅だ」と述べた。
一方、埼玉県医の岡治道常任理事は「大都市の病院から入居者を受け入れる高齢者施設が郊外に増えたことで、郊外の救急医療に混乱が生じている」として、高齢者救急がいくつもの自治体や医療圏にまたがる問題であることを認識するよう訴えた。

●幼稚園バスと老人ホームのバスが衝突したら
福岡県医の大木實常任理事は、搬送にまつわる問題の1つに「トリアージ」を挙げ、「幼稚園バスと老人ホームの送迎バスが衝突事故を起こしたら、どちらの傷病者を先に運ぶべきか」と、例え話で問いかけた。
大木氏は「緑・黄・赤・黒の区別(トリアージ)も大事だが、優先すべきは高齢者より子ども。しかし世間には『命は平等』だと言って議論を吹っかけてくる者もいる」とした上で、「現場の救急隊の負担を少しでも軽くするために、高齢者施設でリビングウィルの形成を積極的に進めるべきだ」と述べた。

●消防・医療・介護の連携で搬送を効率化
厚労省の西嶋康浩医政局救急・周産期医療等対策室長は、高齢者救急の先進事例を紹介。その中で、全国に広がりつつある取り組みとして、健康保険証・診察券・お薬手帳の写しなどを筒に入れて冷蔵庫に保管し、救急隊や医師が患者の状態を把握しやすくする「救急医療情報キット」を挙げた。
また、消防、病院、高齢者施設などが参加する会議で救急医療に関する課題を共有している八王子高齢者救急医療体制広域連絡会の事例を取り上げ、「消防・医療・介護の連携により、独居や施設の高齢者の搬送時間を大幅に短縮できる」と強調した。


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