読者の皆様は、風疹をなくそうの会『hand in hand』をご存知だろうか? 同会は、2013年に共同代表の可児佳代さんたちが設立した、妊娠中に風疹に罹患し、その後出産されたお母さんと先天性風疹症候群(congenital rubella syndrome:CRS)の患者さんのグループである。国内における風疹再流行防止のための情報発信や、風疹流行によって影響を受けた女性・お子さん・家族のサポートを行っている。
13年の団体発足以来、現在までのご活動実績は、厚生労働大臣や大阪府への要望書提出、各関係学会*におけるブース展示、ワクチンパレードや風疹の日(毎年2月4日)1)への参加、医療系専門学校や集会での講演など、多岐にわたっている。特に学会等におけるブース展示による風疹予防の啓発活動は年間10回近くとなっており、実際、私も学会場で熱心に啓発活動をされている可児さんたちのお姿をよくお見かけする。
以前にも当欄で取り上げた通り、国内においては、2019年4月〜25年3月の間、過去に風疹の定期接種を受ける機会が一度もなかった、1962(昭和37)年4月2日〜79(昭和54)年4月1日生まれの男性を対象に風疹第5期定期接種が実施されているが、23年8月の時点で抗体検査を受けた人の割合は30.3%、実際の接種率は6.6%にとどまっている2)。
私は、可児さんたちの10年以上にわたる日本全国での精力的なご活動には尊敬の念を抱かずにはいられない。一方で、我々医療従事者にも、もっとできることがあるのではと常に自問している。実際、23年は、44週時点で国内CRSの報告はないが、風疹報告数は11例となっている2)。風疹第5期接種の実施期間は25年3月までとなっており、既に残すところ1年余りとなっている。さらに昨今の国内外における移動機会の急激な増加を考慮すると、我が国でいつ風疹の再流行が発生しても不思議ではなく、風疹予防活動をさらに強化して最大限の努力をしていく必要がある。
風疹をなくそうの会のホームページでは、『hand in hand』は手話で『いっしょ』を表していると紹介されている。我々医療従事者は、自身が第5期接種対象者である場合はもちろん、自身は接種対象者でなくても、医療の専門家として周囲への啓発を、可児さんたちと一緒に、積極的に行う責務があると考えている。
*日本小児科学会、日本産科婦人科学会、日本周産期・新生児医学会、日本小児科医会、日本外来小児科学会、日本ワクチン学会、日本公衆衛生学会、日本産業衛生学会(順不同)
【文献】
1)国立感染症研究所:IASR. 2023;44:58-9.
2)国立感染症研究所感染症疫学センター:風疹に関する疫学情報.(2023年11月8日現在)
https://www.niid.go.jp/niid/images/epi/rubella/2023/rubella231108.pdf
勝田友博(聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)[hand in hand][風疹第5期定期接種]