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原発開放隅角緑内障・正常眼圧緑内障[私の治療]

No.5198 (2023年12月09日発行) P.46

西島義道 (東京慈恵会医科大学眼科学講座)

中野 匡 (東京慈恵会医科大学眼科学講座主任教授)

登録日: 2023-12-11

最終更新日: 2023-12-05

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  • 緑内障はわが国における中途失明原因第1位の疾患であり,その患者数は現在も増加の一途をたどっている状況である。緑内障は,網膜神経節細胞および視神経の変性によって進行性に視野の異常を生じる疾患であり,進行すると最悪の場合,失明につながる恐れがある。主な原因は眼圧上昇であり,加齢,遺伝,近視,糖尿病,高血圧などがリスクファクターとされている。しかし,わが国においては,眼圧が正常範囲である正常眼圧緑内障が7割を超えている。緑内障は初期段階では自覚症状がないことがほとんどであるため,様々な方法による早期発見が重要である。エビデンスのある治療は眼圧下降のみであり,点眼,レーザー,手術などによる治療がある。

    ▶診断のポイント

    緑内障は眼内の房水流出の役割を担う隅角の構造により,主に開放隅角緑内障(先の正常眼圧緑内障を含む)と閉塞隅角緑内障にわけられる。これらの病型によって治療戦略が異なるため,正確な診断が非常に重要となる。特に,閉塞隅角緑内障は突然の視力低下,眼痛,頭痛,嘔吐など,急性症状を引き起こす緊急疾患であり,可及的速やかな外科的治療(レーザー治療や水晶体再建術)が必要となる。しかし,全緑内障においては,開放隅角緑内障が大多数を占めるため,本稿では開放隅角緑内障に対する治療戦略を中心に解説する。

    開放隅角緑内障は,初期段階では視力低下・視野障害等の自覚症状に乏しい。慢性的に進行することにより,末期の段階では不可逆的な視機能障害を生じる場合があるため,できる限り早期に発見することが重要となる。

    基本的な診断方法としては,まず視力検査,眼圧測定,細隙灯顕微鏡検査による視神経乳頭の陥凹拡大等について観察が行われる。それらに加えて,以下の検査により診断を行う。

    光干渉断層計(optical coherence tomography:OCT):OCTは網膜の三次元的な構造変化の取得が可能であり,早期の緑内障においても従来の視神経乳頭の観察ではとらえられなかった緑内障性変化をとらえることができる。網膜神経線維層欠損(nerve fiber layer defect:NFLD)などの網膜内層の障害は特徴的な緑内障性所見である。

    視野検査(visual field test):緑内障は,網膜神経線維層の構造的な変化に一致した視野異常の存在により最終的な確定診断がなされる。代表的な視野検査に動的視野検査と静的視野検査があるが,緑内障診断においては主として静的視野検査を用いることが多い。汎用される視野計としてhumphrey field analyzer(HFA)があり,主に中心30°内の視野を測定する。緑内障に特徴的な視野欠損とNFLDの所見が一致した場合に,緑内障の診断が確定され,治療が開始される。

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