透析患者はカリウムの尿排泄ができず,高カリウム血症になる症例を多く経験します。食事療法やカリウム吸着薬による加療が中心となっていますが,患者のアドヒアランスによっては治療に難渋します。そのような状況の中,2020年に新しくカリウム吸着薬ジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム(ロケルマ®)が登場し,カリウム治療は変わっていくことが期待されています。現在の透析患者のカリウム管理について,帝京大学・柴田 茂先生にご解説をお願いします。
【質問者】山崎智貴 望星西新宿診療所
【高カリウム血症を助長する要因を是正し,症例によってカリウム吸着薬を併用する】
健常人においては,体内で過剰となったカリウムは大部分が腎臓から排出されることで,体内のカリウム総量が一定に保たれています。カリウムの排出に占める割合は尿が90%,便が10%程度となっており,腎不全患者や透析患者では,腎臓からのカリウム排泄が高度に低下するため,高カリウム血症をきたしやすくなります。
腎機能の低下に加えて,合併する糖尿病や代謝性アシドーシスといった病態は体内のカリウム分布を変えることで,高カリウム血症を助長します。透析患者では,腎臓からのカリウム排泄低下の代償機転として,大腸からのカリウム分泌が増加することが報告されており,便秘によって腸管からのカリウム排泄が障害されると,高カリウム血症をきたしやすくなります。また,レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系阻害薬は透析患者においても血清カリウム濃度を上昇させますが,この働きにも腸管からのカリウム分泌作用が関与していると考えられます。血清カリウム濃度が6.0~6.5mEq/L以上に上昇すると心室細動などの致死的な不整脈をきたすリスクが増加すること,また血液透析患者の死亡率は血清カリウム濃度とU字型の相関関係があることが知られており,透析前の血清カリウム濃度は4.0~5.5mEq/L程度が管理目標の目安となると思います。
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