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進行性腎障害のガイドラインを公表 - IgA腎症など4疾患に関する初の本格GL [日本腎臓学会総会]

No.4708 (2014年07月19日発行) P.10

登録日: 2014-07-19

最終更新日: 2016-11-17

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【概要】日本腎臓学会は6日、IgA腎症、急速進行性糸球体腎炎、難治性ネフローゼ症候群、多発性嚢胞腎の4疾患について「エビデンスに基づく診療ガイドライン」を公表した。


GLは厚労科研「進行性腎障害に関する研究班」が作成した。同研究班は2011年に4疾患に関して専門医の意見に基づいた診療指針を公表しているが、今回は世界のエビデンスを精査し、Minds(厚労省EBM普及推進事業)の手順に従い作成。学会では、4疾患に関する日本初の本格GLと位置づけている。
対象は腎臓内科専門医。日常診療の疑問に回答する形式で、エビデンスレベルに基づいた推奨度と診断治療のアルゴリズムも掲載した。6日の日本腎臓学会総会では各分担代表者が概要を発表した。

●IgA腎症─扁摘パルスの有効性がRCTで報告
湯澤由紀夫氏(藤田保衛大教授)は治療の適応を尿蛋白(g/日)とGFR(mL/分/1.73m2)の数値から5つのカテゴリーに分けたことを紹介。最も重症の「尿蛋白1.0以上、GFR60以上」では、第一選択薬はRA系阻害薬(推奨度A)、副腎皮質ステロイド薬(推奨度B)とした。
日本で広く行われている「扁桃摘出術+ステロイドパルス療法」(推奨度C1)については、国際腎臓病予後改善委員会(KDIGO)が2012年、ランダム化比較試験(RCT)が行われていないため「推奨しない」と評価。一方、厚労省研究班は今年、ステロイドパルス療法とのRCTを実施した結果、扁摘パルス群が有意に尿蛋白減少効果を示したことを報告した。
湯澤氏は「世界に向けた日本初のRCT」と強調するとともに、「世界に(有効性を)発信するには、RCTの蓄積が重要」と指摘した。

●急速進行性糸球体腎炎─初期治療と維持治療
有村義宏氏(杏林大教授)は、急速進行性糸球体腎炎のエビデンスが世界でも十分ではないため、従来の厚労省研究班の治療アルゴリズムを踏襲したと説明。
初期治療は「経口ステロイド単独」「ステロイドパルス+経口ステロイド」「ステロイドパルス+経口ステロイド+シクロホスファミド」の3種類。維持治療は、ステロイド単独または免疫抑制薬の併用とした。

●難治性ネフローゼ症候群─海外とは異なる内容に
GLは難治性ネフローゼ症候群の代表的疾患である微小変化型ネフローゼ症候群、巣状分節性糸球体硬化症、膜性腎症の3疾患について解説。
膜性腎症について西愼一氏(神戸大教授)は、KDIGOでは6カ月間経過観察した後に治療を開始することを推奨しているが、「日本ではコンセンサスが得られていない」とし、患者に応じた治療を選択してもらうために、ステロイド単独、ステロイド+シクロスポリン、ステロイド+シクロホスファミドの3種類を第一選択にしたことを説明した。

●多発性嚢胞腎─トルバプタンを盛り込む
堀江重郎氏(順天堂大教授)は、今年3月に適応が拡大されたトルバプタンをガイドラインに組み込んだことを紹介。投与条件を「クレアチニンクリアランス60mL/分以上かつ両腎容積750mL以上」と明記した上で、推奨度をBとした。
4疾患のGLは8月末ごろに日本腎臓学会のホームページに掲載される予定。

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