減量を目的とするGLP-1受容体アゴニスト(GLP-1-RA)の適応外使用が、国内外を問わず増えているという。しかし肥満例におけるこれら薬剤使用には一定の頻度で重篤な消化器系有害事象が伴うようだ。ブリティッシュ・コロンビア大学(カナダ)のMohit Sodhi氏らが10月5日、JAMA誌にリサーチレター(原著論文に比べ査読は甘い)の形で報告した。
解析対象となったのは米国在住の、セマグルチドかリラグルチド、ナルトレキソン/ブプロピオン(NB:米国で承認されている肥満症治療薬)いずれかの服用を開始した肥満の5411例である。診療報酬データベースからランダムに抽出した。抽出はセマグルチドの適応症が糖尿病のみの時期に限ったが、糖尿病例は除外されている(GLP-1-RAは適応外使用のみ)。
平均年齢はセマグルチド群が53.5歳、リラグルチド群51.3歳、NB群は45.2歳だった(群間検定なし)。体重、BMIは不明である。
これら5411例で、以下の有害事象いずれかの初発を調べた。すなわち「胆道疾患」「膵炎」「腸閉塞」「胃不全麻痺」である。
セマグルチド群(観察期間中央値:0.6年)の「胆道疾患」発生率は11.7/1000人年、「膵炎」ならば4.6/1000人年、「腸閉塞」はゼロ、「胃不全麻痺」で9.1/1000人年だった。
リラグルチド群(同上:1.7年)では「胆道疾患」が18.6/1000人年、「膵炎」が7.9/1000人年、「腸閉塞」が8.1/1000人年、「胃不全麻痺」が7.3/1000人年だった。
2つのGLP-1-RA群を併合してNB群(同上:1.7年)と比較すると、「胆道疾患」のリスクに差はなかったものの、「膵炎」のハザード比(HR)は諸因子補正後9.09(95%信頼区間[CI]:1.25-66.00)の有意高値だった。
同様に「腸閉塞」のHRは4.22(95%CI:1.02-17.40)、「胃不全麻痺」のHRは3.67(95%CI:1.15-11.90)とGLP-1-RA群はNB群に比べて有意に高くなっていた。
Sodhi氏らは、減量目的でGLP-1-RAを使用する場合、リスク・ベネフィットのバランスが糖尿病治療と異なる可能性があると指摘した上で、「適応外使用なら自分で注意するしかない」と結んでいる。
本解析はブリティッシュ・コロンビア大学から資金提供を受けた。
著者らに開示すべき利益相反はないという。