株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

粉瘤(表皮囊腫)[私の治療]

No.5176 (2023年07月08日発行) P.47

安田正人 (群馬大学大学院医学系研究科皮膚科学准教授)

登録日: 2023-07-07

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 粉瘤(表皮囊腫)は,表皮構造を壁に持つ囊腫であり,内部に角質塊が充満する。表皮の陥入や毛包の閉塞により,全身の皮膚に生じる。時に囊腫壁が破れたり,二次感染を起こすことで発赤,疼痛を生じ,炎症性粉瘤となる。自壊もしくは切開すると,特有の臭いを持つ膿様の角質塊〔brei(独語):ドロドロした粥状のもの〕が排出される。

    ▶診断のポイント

    生じる部位にもよるが,皮膚常色で,なだらかに隆起する結節を呈する。中央に角栓(へそ)があれば診断は容易であるが,みられないことも多い。大切なのは触診であり,粉瘤は表皮から連続して囊腫構造をとり,皮内から皮下にかけて局在するため,被覆皮膚との可動性に乏しく,下床との可動性は良好である。超音波検査も診断に有用であり,皮内の境界明瞭な低エコー腫瘤として検出され,後方エコーの増強,囊腫壁を反映した外側陰影がみられる。腫瘤内部は層状の角質塊を反映し,高エコー領域を伴うこともある。

    既に発赤,腫脹,排膿などを生じて受診した場合は,問診により以前からしこりを自覚していたかどうかが鑑別点となるが,症状に乏しく自覚できていなかったことも多い。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    外科的切除が基本である。将来的に炎症性粉瘤となることもあり,また稀ではあるが,がん化し有棘細胞癌を生じることも知られているため,切除を勧める。患者の希望によっては経過観察とする。

    炎症性粉瘤の場合,発赤,軽度の疼痛を伴うのみであれば,ステロイド局注や抗菌薬内服で改善を図ることもあるが,被覆皮膚が菲薄化し,膿がたまり波動を触れる場合は積極的に切開排膿を行う。切開後は頻回な通院が必要となるため,患者の都合も考慮して選択する。

    残り1,122文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top