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【識者の眼】「恒例の年中行事 今年もまた」邉見公雄

No.5177 (2023年07月15日発行) P.58

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2023-07-04

最終更新日: 2023-07-04

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この国の定例行事となった不祥事。以前は「みずほ」「東芝」「三菱」「日立」「日産」「電通」など名の知れた大企業であったが、最近は優秀だった筈の霞が関にも伝染し、情けない限りである。

今回取り上げるのはマイナンバー資格確認。健康保険証を来年秋に廃止し、種々の行政手続きをマイナンバーカード1枚に集約する施策である。方向は正しいと思われるが拙速過ぎた。小学生の力しかないのに高校をめざしたようなものである。オンライン処方箋がドタバタで半年延びたのに、再び同じ過ちを、前車の轍を踏んでしまった。

河野太郎デジタル相は国会や記者会見で頭を下げどおしである。官僚を劣化させたのは安倍・菅コンビだから、先輩達のツケを払わされているのかも知れない。今回の新型コロナパンデミックで、日本国のデジタル敗戦は衆目の認めるところとなった。韓・台の周回遅れ、米・中の背中も見えない。その焦りから起きた事例と同情すら覚える。官民混交のデジタル庁はまだ意志統一が不十分だろう。合併後のみずほ銀行のシステムトラブルとよく似た構図である。

厚生労働省の統計ミスは恒例である。「“女の涙”程しか信じられない体たらく」と友は語る。国民として寂しい限りである。

厚生省単独のときでも仕事の量が多かった。私も関わった診療報酬や介護報酬など公定価格の決定、公衆衛生や今回の新型コロナウィルスのような感染症対策、医薬品や食品の安全管理や認定、医師をはじめとする医療職の国家試験やその後の監督。障害者福祉や精神障害者への目配り。5疾病6事業から、先の太平洋戦争の戦没者遺骨収集まで、もの凄い範囲と量である。これに労働省が加わり、仕事や会議は増えこそすれ、減ってはいないはずである。与党を中心に厚労省分割案が出ては消えるのもよく解る。今回のマイナンバーの事件を契機に改めてよく議論してみるのも、国民にとっても厚労省にとっても良いのではないかと考えている。

今回のトラブルは中央省庁より更にデジタル化が遅れている多くの自治体に業務が降ろされたので、信じられないミスが多発しており、デジタル庁、厚労省、総務省がマイナンバー情報総点検本部を立ち上げた。泥縄にも程があるが、仏の顔も三度である‼ 全員一致団結して国民の信頼を取り戻して欲しい。

次世代コンピューティング技術の実現をめざす2050年まで、四半世紀あれば挽回可能。2年連続最下位から日本一になったヤクルトやオリックスと同じ栄冠の可能性を信じている。「頑張れ‼ 凄いぞ‼ 厚生労働省‼」と唱えられる日まで。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[マイナンバー]

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