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先天性難聴[私の治療]

No.5175 (2023年07月01日発行) P.40

中川尚志 (九州大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科学教室教授)

登録日: 2023-06-28

最終更新日: 2023-06-27

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  • 先天性難聴は新生児の1000人に1人と,他の先天性疾患に比べ高頻度でみられる。原因の60%近くは遺伝子変異で,15%が先天性サイトメガロウイルス感染症である。遺伝性難聴の70%は非症候性である。3歳時点で,新生児期に難聴がなかった児の2000人に1人に難聴が発見される遅発性難聴が報告されている。

    ▶診断のポイント

    新生児聴覚スクリーニング,1歳半健診,3歳児健診,就学児健診がスクリーニングとして重要である。難聴が疑われた際は経過をみずに精密医療機関に速やかに紹介する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    早期発見・早期支援につなげることで音声言語,手話言語など言語全般の発達に有利となる。他覚的聴力検査である聴性脳幹反応(auditory brainstem response:ABR),聴性定常反応(auditory steady-state response:ASSR)を実施し,難聴の診断をする。これらの検査による閾値は誤差が大きいため,聴性反応検査である条件詮索反応(conditioned orientation response audiometry:COR)を実施することで両耳聴の聴力閾値が得られるようになる。左右差は他覚的聴力検査に加え,ヘッドホンで左右別に検査ができる遊戯聴力検査で確定する。また,感音性であるか,伝音性であるかは5~7歳ぐらいでの純音聴力検査まで待たないと最終的な判断はできないが,伝音性のみで聴力レベルが70dB以上になることはない。乳幼児の聴力検査では,特に低年齢において,1種類の聴力検査で正確な聴力レベルを得ることは困難なため,複数の検査方法,聴性反応を用いた自覚的検査と誘発反応による他覚的検査を併用する。それらの結果を合わせて閾値を判定する「cross-check principle」が乳幼児の聴力検査をみる場合の原則である。他覚的聴力検査のみで聴力レベルを判断してはいけない。

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