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介護予防給付サービスの市町村移行に懸念 - 厚生労働委員会地方公聴会 [医療・介護総合確保推進法案]

No.4699 (2014年05月17日発行) P.12

登録日: 2014-05-17

最終更新日: 2016-11-16

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【概要】衆議院厚生労働委員会が12日に開いた医療・介護総合確保推進法案に関する地方公聴会で、介護分野の改革案への懸念や、高齢者医療偏重を指摘する声が上がった。

地方公聴会は大阪市と甲府市で開催。このうち大阪市の公聴会では、4人の医療・介護関係者が意見陳述を行った。
社会福祉法人こばと会の正森克也事務局長は、要支援1、2の者への介護予防給付サービスの提供主体を市町村に移行する改革案に対し、「介護予防のために創設された制度にもかかわらず、予防効果の検証もせずに市町村へ移行するのは拙速」との見解を述べた。また、特別養護老人ホームの入所要件を要介護度3以上とする規定についても「現行の介護報酬制度によって(介護度の)重い人の入所を優先するよう誘導がなされている。入所の申し込みや相談自体ができなくなれば、医療・介護従事者が入所者の背景に潜む認知症や虐待を見つける機会が減少する」と懸念を示した。
介護問題研究会の吉年千寿子座長も、「介護のプロは、訪問先の高齢者の生活支援・家事支援の中で、必要に応じて医師や薬剤師など専門家につなぐことができるが、すべてのボランティア組織やNPOが同レベルのサービスを代替できるとは考えがたい」として、市町村事業化によりサービスの質が低下する恐れがあると指摘した。
●小児切り捨て危惧する声も
一方、小児医療の立場から意見陳述に立った大阪発達総合療育センターの船戸正久副センター長は、「法案には療育の視点があまりに欠けている」と指摘。重度の心身障害を持つ小児に対する在宅医療・介護提供体制の整備が遅れていることを挙げ、「在宅医療の推進の流れがあるが、小児の看取りなど在宅では難しい医療もある。消費税増税分の財源が高齢者医療の充実にばかり回されており、現場では小児医療・小児介護がこのまま切り捨てられるとの危機感がある」と訴えた。
大阪府薬剤師会の藤垣哲彦会長は、在宅医療の中での薬剤師の役割について意見陳述を行った。地域における在宅医療では医療職と介護職の間に壁ができやすいことを指摘した上で、「薬剤師は日常業務の中で、患者に直接指導する機会が多くなってきている。在宅服薬管理などを通じて、薬剤師が地域で医療職と介護職の橋渡し役を担うことが期待できる」と強調した。
●審議拙速との批判に「目の届かない部分ある」
公聴会では意見陳述人から、委員会での法案審議に対し「個々の改革案の検討が拙速」との批判が相次いだ。これに対し、出席した議員からは「法案に盛り込まれた内容が多岐にわたりすぎて目の行き届いていない部分が多々ある」「法案成立後も禍根を残すところがあると思う」など、審議不十分となることへの懸念の声が上がった。

【記者の眼】介護予防給付サービスの市町村事業化は、委員会質疑で連日取り上げられ、法案審議の最大の焦点となっている。一方で、その他の改革案は議論がおざなりな印象だ。公聴会では医療法、介護保険法など制度の根幹を成す法律を一括改正する大規模法案ゆえの問題点が、現場の視点からも指摘された。(F)

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