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特集:高年齢労働者の労災防止対策─産業医はココに注意

No.5170 (2023年05月27日発行) P.18

財津將嘉 (産業医科大学高年齢労働者産業保健研究センター教授)

登録日: 2023-05-26

最終更新日: 2023-05-25

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2003年九州大学医学部卒業。東京大学泌尿器科学教室に入局後,臨床医を経て,2016年東京大学公衆衛生学教室助教,ハーバード大学留学,2020年獨協医科大学公衆衛生学講座准教授。2022年より現職。

1 高齢化の状況
日本の総人口が減少する中で,高齢者人口は過去最多を更新している。それに比例して高齢者の就業者数も増加しており,2011年の571万人から2021年には912万人となり,10年間で350万人近く増えている。
「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」により,事業主に対して,2025年以降は希望する労働者全員を65歳まで雇用することが義務づけられた。2021年4月からは70歳まで就業機会が得られるようにすることが努力義務化されたことや,「人生100年,生涯現役」の時代の到来が予想される中,高齢就業者の人口も今後,さらに増加することが予想される。

2 高年齢労働者の労働災害の発生状況
労働災害の発生状況をみると,死亡者数,休業4日以上の死傷者数ともに,長期的には減少傾向にある。しかし,60歳以上の労働者(高年齢労働者)の死傷者数は2009年以降,ほぼ増加の一途をたどっており,2021年は3万8574人と全死傷者の25.7%を占めている。年齢別で各種の労働災害の千人率を見てみると,若年層と高年齢層で高くなっており,高年齢女性労働者の転倒災害の発生率は特に高くなっている。また,業務の経験期間が短いと労働災害発生率が高くなり,休業見込期間についても高年齢労働者ほど期間が長くなっている。
今後,高年齢労働者人口が増加することをふまえると,高年齢労働者の労働災害もさらに増加することが考えられる。

3 国による高年齢労働者の労働災害防止対策
2023年度からスタートしている国の「第14次労働災害防止計画」において,「60歳代以上の死傷年千人率を2022年と比較して2027年までに男女ともにその増加に歯止めをかける」と目標を掲げている。また,これ以上,高年齢労働者の労働災害を増やさないためにも,高年齢労働者の労働災害防止対策の推進が重点事項として示されるなど,国としても,喫緊の課題として取り上げている。

4 エイジフレンドリーガイドライン
高年齢労働者の労働災害を防止するために,厚生労働省が2020年3月に公表した「高年齢労働者の安全と健康確保のためのガイドライン(エイジフレンドリーガイドライン)」がある。当ガイドラインには,「事業者に求められる事項」と「労働者に求められる事項」が示されており,取り組むにあたっての筆者なりのポイントを説明し,事業場における取り組み事例を併せて紹介する。

5 わが国における職業背景とがんや循環器疾患
職業病としてのがんや循環器疾患は,労働災害全体の中では数少ないが,高年齢労働者が増えるということは,生活習慣病の側面を持つがん・循環器疾患が,労働者全体の中で増加することが考えられる。高年齢労働者の健康確保対策を考える上では,こうした点にも配意する必要がある。ここでは,わが国における職業背景とがんや循環器疾患についての最近の知見を紹介する。

6 高年齢労働者の労働災害を減らすために
現在,高年齢労働者がほとんど働いていない事業場もあるかと思われるが,高年齢労働者の人口が今後も増加することに伴い,近い将来,ほとんどの事業場で高年齢労働者が働いていることが予想される。現場に高年齢労働者を迎える前から,労働災害の防止に必要な準備や対策を行っておくことが重要である。

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