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天疱瘡[私の治療]

No.5161 (2023年03月25日発行) P.47

石井 健 (東京歯科大学市川総合病院皮膚科教授)

登録日: 2023-03-24

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  • 天疱瘡は,表皮細胞間接着において重要な役割を持つカドヘリン型細胞接着因子であるデスモグレイン(desmoglein:Dsg)に対する自己抗体により,全身の皮膚・粘膜に水疱やびらんを形成する自己免疫性疾患である。主な病型として尋常性天疱瘡,落葉状天疱瘡,腫瘍随伴性天疱瘡がある。

    ▶診断のポイント

    臨床症状,病理組織学的所見,免疫学的検査所見から診断確定される。

    ①臨床的診断項目:皮膚および口腔粘膜に多発する弛緩性水疱およびびらんを認める。

    ②病理組織的診断項目:表皮細胞間接着障害(棘融解)による表皮内水疱を認める。

    ③免疫学的診断項目:蛍光抗体直接法で皮膚・粘膜部の表皮細胞膜(間)部にIgGの沈着を認める。蛍光抗体間接法で血清中の抗表皮細胞膜IgG抗体を検出する,またはCLEIA(ELISA)法により血清中の抗Dsg IgG抗体を検出する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    天疱瘡は自己免疫性疾患であり,抗体産生を抑制する目的のためプレドニゾロン(PSL)内服が治療の主体となる。病初期において集中的かつ十分な治療で開始し,PSL 0.2mg/kg/日または10mg/日以下および最低限の併用療法(免疫抑制薬)により,天疱瘡の皮疹のない寛解が維持されることをめざす。天疱瘡のガイドラインに示されているように,治療導入期,治療維持期にわけて治療戦略を立てていく。

    【治療導入期】

    治療導入期は,治療開始からおおよそ2~4週で,病勢を制御することが可能となり,ステロイド減量が行われるまでの治療初期を指す。初期治療は,ステロイド内服が第一選択で,中等症以上ではPSL 1mg/kg/日が標準的投与量である。軽症の場合は,0.5mg/kg/日で効果がみられることがある。初期治療で1~2週間ほど経過をみて治療不十分と判断された場合は,速やかに免疫抑制薬(アザチオプリンなど),血漿交換療法,免疫グロブリン大量療法,ステロイドパルス療法などの追加を考慮する。

    治療導入期における病勢評価と治療効果判定は,臨床症状のスコアであるpemphigus disease area index(PDAI)を用いる。治療導入期は最低週1回程度PDAIを測定して治療効果を判定し,追加治療の必要性を検討する。漫然と同量のステロイドを長期にわたり投与することは避ける。

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