血栓性微小血管症(thrombotic microangiopathy:TMA)は,本来,血管内皮障害と全身の諸臓器の微小血管の血栓を呈する病態を総称した病理診断名であった。しかし現在は,臨床的に①消費性の血小板減少,②溶血性貧血(破砕赤血球),③血栓による臓器障害(急性腎障害など),を特徴とする疾患群として考えられている。原因により,志賀毒素産生性大腸菌感染による溶血性尿毒症症候群(STEC-HUS),血栓性血小板減少性紫斑病(TTP),補体関連TMA(aHUS),二次性TMA(膠原病,悪性腫瘍,薬剤,感染,妊娠など)に分類される。急速な病態の進行を認めることが多いが,原因により治療法が異なるので,しっかりと診断して迅速に治療を開始することが重要である。
三主徴である血小板減少(15万/μL未満),溶血性貧血(Hb 10g/dL未満),急性腎障害(小児では年齢・性別による血清Cr基準値の1.5倍以上,成人では急性腎障害の診断基準を満たす)を認めた場合に本症を疑う。播種性血管内凝固症候群(DIC)や自己免疫性溶血性貧血ではないことを確認する。
志賀毒素産生性大腸菌感染症が認められる場合はSTEC-HUSが考えやすい。ADAMTS13活性を測定し10%未満であればTTPと考え,さらに抗ADAMTS13自己抗体(インヒビター)の有無により後天性TTPと先天性TTPを鑑別する。ADAMTS13活性が10%以上であればaHUSあるいは二次性TMAとして基礎疾患の検索と治療を行う。C3低値かつC4正常値であれば補体第2経路の活性化が示唆されるので,aHUSが強く疑われる。しかし,C3が正常値でもaHUSを否定できないので注意する。aHUSの確定診断には,既知の原因遺伝子検査や抗H因子抗体の有無の解析が必要であるが,遺伝子異常がみつからない場合でもaHUSの否定はできない1)。
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