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【識者の眼】「かかりつけ医の制度化に向けての一歩」草場鉄周

No.5145 (2022年12月03日発行) P.58

草場鉄周 (日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)

登録日: 2022-11-24

最終更新日: 2022-11-24

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11月に入ってかかりつけ医をめぐる議論に一石を投じる提言が2つあった。

最初は11月2日に発表された日本医師会の「地域における面としてのかかりつけ医機能(第1報告)」である。端的に言うと、厚労省の政策にある「医療機能情報提供制度」とかかりつけ医機能への診療報酬評価の充実強化を進め、地域における面としてのかかりつけ医機能を整備する、という内容である。いずれも現在既に展開されている政策の焼き直しに過ぎず、充実強化によってどのような変化や価値向上がなされるかはあいまいであり、新味に欠けていた。

次は11月11日に実施された全世代型社会保障構築会議において権丈委員が提言した「かかりつけ医機能合意制度」である。詳細は内閣HP(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/zensedai_hosyo/dai8/siryou7.pdf)を参考にして頂きたいが、以下の6つの機能を満たすか、常勤の総合診療専門医が在籍する医療機関が自らを「かかりつけ医機能認定医療機関」として届け出を行い、都道府県知事の認定を受けた後、患者側もその医療機関を手挙げ方式で選択し、双方が「かかりつけ医機能」を提供・受給する関係に合意する、という制度である。

6つの機能を列挙する。①一般的な健康問題への対応、PHRを基に継続的な医学管理及び健康増進、重症化予防などをオンラインを活用しながら行い、日常的な健康相談を行っていること、②地域の医療機関及び福祉施設等との連携、③休日・夜間も対応できる体制及び、診療時間外を含む、緊急時の対応方法等に係る情報提供を行うこと、④在宅療養支援診療所であること、またはそれとの連携、⑤地域公衆衛生への参加、⑥地域が抱える社会的課題に向き合い、地域包括ケアにおけるメンバーとして地域の多職種や医療・介護・福祉施設とデータを共有し、協働して解決に取り組むことができる。

後者については筆者が従来より提言していた「かかりつけ総合医制度」とも重なる要素が多く、ようやく日本にも国際標準にも叶うプライマリ・ケアを実現させる方向性が見えてきたと感じている。もちろん、日本医師会報告との落差は大きく、そのギャップを埋めるための議論が今後展開されるのは必定である。その際には、日本の現在、そして将来の医療課題にどう立ち向かうかという視点を忘れずに議論を展開して頂きたいと強く願っている。

草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]

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