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【識者の眼】「オンライン資格確認の本質」土屋淳郎

No.5143 (2022年11月19日発行) P.56

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2022-10-31

最終更新日: 2022-10-31

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前回のコラム(No.5138)で、全国医療介護連携ネットワーク研究会の全国大会について述べた。厚生労働省の担当官の話は筆者にとって新たな知見も多く、かかりつけ医としてさらなるICT利用は必須のタスクであることや、オンライン診療の規制を緩和した厚労省はこれを「もっと使ってもらいたい」と思っていることなどを感じた。そして日本医師会理事の講演では、オンライン資格確認の話が印象的だったので、今回はこれについて少し述べてみたい。

オンライン資格確認システムの導入について、筆者は「状況が整うまで時間もあるだろう」と思いのんびりと対応していたが、8月に「原則義務化」が公表され、今になって慌てている状況である。巷では、療養担当規則に違反するという話に対して原則義務化の撤回を求める声が出たり、紙の保険証を廃止しマイナンバーカードを保険証として利用するという政府の方針に対して、野党から“天下の愚策”という話が出たりしている(これについては批判の論点がずれているとの報道があったことも興味深い)。マイナンバーカードの利用を進めたい政府の思惑もあってか、オンライン資格確認からマイナ保険証という流れに注目が行きがちだが、本質はそこではないようだ。

冒頭で記した講演において、日本医師会のオンライン資格確認に対する立場として発表されたスライドでは、「オンライン資格確認システムにおいては、保険資格確認はその機能の一部に過ぎず、その本質は安心安全に医療機関がつながる全国的なネットワークの構築である」とされ、「オンライン資格確認は、今後の日本の医療で必須となる医療DX、全国医療情報共有の基盤である『全国医療情報プラットフォーム』に発展するもの」とされている。安心安全で質の高い医療情報、かかりつけ医機能の発揮に寄与するであろう「全国医療情報プラットフォーム」は「日医IT化宣言2016」以来切望されてきたものであり、今後は特定健診情報、レセプト由来の薬剤情報や診療情報等、電子処方箋などの情報が共有され、いずれは電子カルテの情報も共有される仕組みも検討中との話もあった。

医療DXが今後の医療に必須であることは皆が認識していることだとは思うが、その基盤となるネットワークのビジョンは2016年より前から既に検討されていた。今後も発展していくその過程の中で、オンライン資格確認システムの導入はその第一歩であることを理解して対応しなければならないと感じ、筆者は少し怠けながら対応していたことを反省した。

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[全国医療情報プラットフォーム

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