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現代的SDHのトピックと対応法への示唆:社会的孤立─社会的孤立とプライマリ・ケアの質[プライマリ・ケアの理論と実践(161)]

No.5139 (2022年10月22日発行) P.14

青木拓也 (東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部講師)

登録日: 2022-10-20

最終更新日: 2022-10-19

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SUMMARY
社会的孤立状態の患者・住民に対するプライマリ・ケアの質向上(特に継続性,包括性,地域志向性)は,社会的孤立による健康リスクの緩衝に繋がる可能性があり,プライマリ・ケアの役割が大いに期待される。

KEYWORD
社会的孤立
個人が社会的帰属感を欠き,他者との関わりを欠き,社会的接触の頻度が少なく,充実した人間関係が欠如している状態。

青木拓也(東京慈恵会医科大学総合医科学研究センター臨床疫学研究部講師)

PROFILE
日本医療福祉生協連家庭医療学開発センターで総合診療/家庭医療の研鑽を積み,現在はAcademic GPとしてプライマリ・ケア研究に注力している。博士(医学),医療政策学修士,家庭医療専門医,社会医学系専門医,臨床疫学認定専門家。

POLICY・座右の銘
吾唯足知


1 はじめに

社会的孤立(social isolation)に明確な定義はないが,一般的に「個人が社会的帰属感を欠き,他者との関わりを欠き,社会的接触の頻度が少なく,充実した人間関係が欠如している状態」を指す1)。COVID-19パンデミックに伴い,社会的孤立は高齢者を中心に,よりいっそう深刻な国際的課題になっており2),わが国でも,2021年に孤独・孤立対策担当室が内閣官房に設置されるなど,政策上の動きがみられる。

これまでの研究によって,社会的孤立は,全死亡,再入院,認知機能低下,自殺などのリスク上昇との関連が指摘されており,医療分野においても,健康の社会的決定要因(social determinants of health:SDH)のひとつとして,重要な課題として認識されている。特に地域と密接なプライマリ・ケアの現場では,このような社会的課題に遭遇する頻度が高く,その対応における役割が期待されているものの,わが国のプライマリ・ケアにおける社会的孤立の実態は,これまで十分に明らかになっていなかった。

そこで我々は,プライマリ・ケアを受診する高齢患者を対象に,社会的孤立の実態,および社会的孤立患者が持つプライマリ・ケアの質に関する経験・認識を明らかにする研究を実施した3)4)。本稿では,その結果を足がかりとして,プライマリ・ケアにおける社会的孤立への対応について考察したい。なお,社会的孤立の対応策のひとつである社会的処方については,既に本連載の別の稿で詳しく紹介されているため,本稿では説明を割愛する。







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