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腎臓病検診の医療経済分析 【特定健診に尿蛋白検査を加えれば国民医療費は年間7900万~10億6700万円の節約に】

No.4797 (2016年04月02日発行) P.51

山縣邦弘 (筑波大学腎臓内科教授)

登録日: 2016-10-09

最終更新日: 2016-10-28

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わが国では,1970年代より年1回の定期健診の実施項目として尿検査が義務づけられ,現在まで継続されている。わが国の尿健診には30年以上の歴史があり,慢性糸球体腎炎の早期発見とその後の治療法の進歩が,透析導入患者数の減少につながった。しかし,2008年から始まった特定健診の項目から尿検査を除外する動きもあり,尿検査の医療経済性を含めた診療の方向性を具体的に示すことが求められた。
一般住民に対する毎年の尿検査の施行には,欧米で否定的見解が多く出され,高血圧,糖尿病など有病者に限れば,あるいは高齢者で年齢に応じて行えば,または検査頻度を数年に1度などに減らせば,医療経済的に意義があると結論された。しかし,日本人のデータを用いた医療経済分析では尿蛋白検査実施に伴う増分費用は113万9399円/QALYと,欧米の28万2818US$/QALYとは大きく異なり,日本人では十分cost effectiveであることが示された(文献1)。
さらに特定健診に尿蛋白検査を加えたことの財源影響分析では,尿蛋白検査の実施で年間16億円のコスト増であることを加味しても,国民医療費に対しては年間7900万~10億6700万円の節約となり,現在の特定健診での尿蛋白検査の義務化は国民医療費をトータルで削減する方向に働いていることが明らかとなった(文献2)。

【文献】


1) Kondo M, et al:Clin Exp Nephrol. 2012;16(2):279-91.
2) Kondo M, et al:Clin Exp Nephrol. 2014;18(6):885-91.

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