眼窩吹き抜け骨折は,スポーツなどで外傷により外眼部に外力が加わり,眼窩内圧が急激に上昇して発生する疾患である。
眼窩内容物が上顎洞や篩骨洞へ広範囲に逸脱するタイプと,狭い範囲で生じた骨折部位に眼窩内容物が絞扼されるタイプがある1)。後者は緊急手術を要する可能性があり,注意が必要である。
症状として代表的なものに,①複視,②眼球運動制限,③眼球陥凹,が挙げられる。若年者では成人に比べ骨折部に下直筋が絞扼されやすく,その場合, 特徴的な症状として眼心臓反射による一過性失神,低血圧,悪心・嘔吐,徐脈などを呈する。
眼窩吹き抜け骨折においては,前房出血,硝子体出血,網膜振盪など,眼外傷時の所見や頭蓋内損傷がみられることもあり,患者全体をみる必要がある。その上で臨床上必要な検査は以下になる。
Hess赤緑試験,両眼注視野検査:眼球運動障害と複視を評価,定量する。
Hertel眼球突出計:眼球陥凹,眼球突出の程度を評価する。
牽引試験(forced duction test:FDT):骨折による機械的眼球運動障害,副鼻腔内嵌頓組織の存在の有無を調べる。局所麻酔下に行うFDTは,術前検査としての意義は少ないとされているが,術中に全身麻酔下に行うFDTは,整復術前後における機械的伸展障害の有無を判定するのに有用であり,嵌頓組織の癒着解除,整復の状況を確認する。
画像検査(CT,MRI):CT検査の有用性が高く,眼窩thin sliceにて3方向で評価する。骨折の位置・形状・範囲や外眼筋,眼窩内脂肪などの眼窩軟部組織の状態を把握する。MRI検査は軟部組織の観察に適しているため,外眼筋と眼窩内脂肪の識別や状態をより詳細に把握したいときに行う。
外傷後の患者が来院した際,問診や身体診察時は,整容面・機能面・症状の3つの側面にまずは注目し,どの程度患者が困っているのかを整理する。整容面は眼球陥凹の有無,機能面は複視の有無,症状は眼球を動かす際の痛みや違和感である。眼球を動かす際に嘔気を伴う,痛みの症状が激烈である等の症例は,眼窩の組織が骨の間で絞扼されている可能性が高く,緊急手術による絞扼解除を考慮する。
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