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骨盤臓器脱[私の治療]

No.5131 (2022年08月27日発行) P.51

明樂重夫 (明理会東京大和病院院長)

登録日: 2022-08-24

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  • 骨盤臓器脱とは子宮,膀胱,小腸,直腸などが腟内に下垂する疾患の総称である。脱出臓器により子宮脱,腟断端脱,膀胱瘤,直腸瘤などに分類され,その頻度は閉経後女性の約40%,経産婦の約50%と非常に高い。出産,加齢や肥満,便秘など腹圧上昇により引き起こされた骨盤内臓器支持組織の損傷が原因とされる。症状は外陰部の違和感から始まり,進行すると完全に腟から脱出して排尿障害や性器出血を訴えるようになり,女性のQOLは著しく障害される。

    ▶診断のポイント

    骨盤臓器脱の診断は,内診や直腸診,経会陰エコーなどにより損傷部位を同定し,脱の程度をpelvic organ prolapse quantification(POP-Q)法にて評価する。その上で症状や患者のQOLから治療の要否や手術適応を決めていく。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    POP-Qのgrade 2以下であれば,まず骨盤底筋訓練を励行し,ダイエットや便秘回避など腹圧をかけないような生活習慣の指導をする。

    訓練にて改善をみないものやgrade 3以上は,まず保存的治療としてペッサリー療法を試みる。ペッサリー療法は腟への負担軽減のため,自己着脱法を基本とし,折れ曲げやすい製品を多用している。

    ペッサリー療法が無効な場合には外科的治療を行っている。手術術式として腟式子宮全摘術,腟壁形成術や腟閉鎖術など,損傷した組織を修復するnative tissue repair(NTR)から,メッシュを用いた腹腔鏡下仙骨腟固定術(laparoscopic sacrocolpopexy:LSC),さらにこれをロボット支援下で行うrobot-assisted sacrocolpopexy(RSC)まで行っている。正確な損傷部位の診断のもと,DeLanceyの分類でレベル別に症例を分類し,患者の症状や年齢,損傷部位などを勘案して術式を選択している。なお,経腟メッシュ手術(tension-free vaginal mesh:TVM法)は,世界的な施行制限の状況から現在では我々はほとんど行っていない。

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