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水疱性角膜症[私の治療]

No.5124 (2022年07月09日発行) P.53

小林 顕 (金沢大学附属病院眼科病院臨床准教授)

登録日: 2022-07-07

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  • 水疱性角膜症(bullous keratopathy:BK)は,角膜内皮細胞機能不全により不可逆的に角膜実質および上皮に浮腫を生じる疾患である。角膜内皮細胞密度が500cells/mm2以下に低下した状態では,角膜内皮細胞の機能である角膜実質水分の前房内への汲み出し(ポンプ機能)と水分のバリア機能が不十分となり,角膜実質および上皮に浮腫を生じ,視力の低下と眼痛が起こる。

    ▶診断のポイント

    細隙灯顕微鏡にて角膜上皮と実質の浮腫を認め,視力の低下や羞明,霧視を生じる。スペキュラーマイクロスコープで撮影可能な軽症例では,角膜内皮細胞密度の減少が認められる。また,BKでは角膜厚の肥厚がみられ,前眼部光干渉断層計等による角膜厚測定から角膜内皮細胞機能を推定することができる(角膜厚中央部正常値は500~550μm)。

    角膜内皮細胞密度が500cells/mm2以下に低下した重症例では,角膜実質浮腫およびDescemet膜皺襞が強くなり,角膜上皮下の水疱形成や水疱の破裂による角膜上皮欠損がみられる場合がある。

    原因は角膜内皮細胞を標的とする疾患による原発性のものと,外的要因に伴う炎症あるいは物理的損傷による続発性のBKに大別される。原発性としてはFuchs角膜内皮ジストロフィ,後部多形性角膜ジストロフィ,虹彩角膜内皮症候群,先天性遺伝性角膜内皮ジストロフィ,サイトメガロウイルス角膜内皮炎,単純ヘルペスウイルス角膜内皮炎,落屑症候群,角膜移植後拒絶反応などが代表的である。続発性としては,角膜ぶどう膜炎,角膜実質炎,白内障手術後,角膜移植後,網膜硝子体手術後,緑内障手術後(濾過手術,アルゴンレーザー虹彩切開術),コンタクトレンズ長期装着,角膜外傷,分娩時外傷などがある。

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