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CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)[私の治療]

No.5124 (2022年07月09日発行) P.49

後藤俊介 (神戸大学大学院医学研究科腎臓内科学/腎・血液浄化センター)

西 慎一 (服部病院腎臓内科部長)

登録日: 2022-07-10

最終更新日: 2022-07-05

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  • CKD-MBD(慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常)は慢性腎臓病により生じるカルシウム(Ca)やリン(P)などの骨・ミネラル代謝異常が骨や副甲状腺だけでなく,血管石灰化などを通じて心血管病や生命予後にも大きな影響を与えることが認識され,2006年に提唱された疾患概念である。

    ▶診断のポイント

    eGFRによる腎機能に見合った,Ca,P,副甲状腺ホルモン(PTH)の異常がある場合,診断は容易である。ただし,たとえばPTHが高値であっても腎機能に比してCaが高めでPが低い場合は原発性副甲状腺機能亢進症を疑うなど,他の疾患が合併していないかは注意が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    ガイドライン1)2)では,透析患者はP:3.5~6.0mg/dL,Ca:8.4~10.0mg/dL,インタクトPTH:60~240pg/mL,保存期腎不全患者は各基準値が管理目標値となっているため,これらを参考に治療を行う。また,P>Ca>PTHの順で治療することも推奨されている。ただし,これらのガイドラインは,特に日本透析医学会のものは2012年に発表されたものであり,今後改訂される可能性はある。筆者個人としては,以前と比較しP,Ca,PTHを管理する手段は増えたため,長期予後が見込める患者においては,より厳格に管理することもある。たとえば,血管石灰化が強い場合は,Pが基準値内であっても5.0mg/dL以下をめざすこともある。

    治療は,まずは食事療法と,透析患者であれば十分な透析を行うことが重要である。ただし,食事中のP量は蛋白質量に比例しているため,食事のP制限は蛋白質制限につながることもある。しかし,過度の蛋白質制限により,かえって生命予後を悪くすることもある。保存期腎不全の場合,既に腎臓病に対して蛋白質制限が行われているため,それ以上の蛋白質制限は難しい。ただし,食品添加物にはPを多く含むものもあるため,これらを制限することは有用かもしれない。

    その上で,薬物療法としては,高リン血症に対してはリン吸着薬,低カルシウム血症に対してはカルシウム含有リン吸着薬やビタミンD製剤,高PTH血症に対してはカルシウム受容体作動薬やビタミンD製剤が用いられる。重症の副甲状腺機能亢進症の場合は副甲状腺摘除術が行われる。

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