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【識者の眼】「医療従事者などが新型コロナウイルスワクチンの4回目接種ができるように」和田耕治

No.5124 (2022年07月09日発行) P.62

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2022-06-30

最終更新日: 2022-06-30

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新型コロナウイルスのワクチンの4回目接種が始まっている。現在は、60歳未満で特定の基礎疾患がない場合には、医療従事者などは接種の対象者になっていない。イスラエルでの研究からも若い医療従事者の接種の効果については限定的とする報告がある1)

一方で、これまで新型コロナウイルス感染の拡大を抑えてきた多くの国で、対策を転換したり、対策の継続が難しくなったこともあってか、台湾、オーストラリア、ニュージーランドでも大きな流行の波を経験している。日本で既感染者の数がどのくらいかは抗体検査などの結果が待たれるが、大きな流行が起こりえるほどの感受性者はいると考えられる。

これまで、新型コロナウイルスのワクチン接種は、予防接種法の臨時接種の特例として行われてきた。ここにきて、60歳未満の医療従事者、さらには介護労働者が接種を希望する場合にどのように位置づけるかを議論するべき時にある。これまで経験してきたように、医療や介護サービスの提供が困難になる理由として従事者などの感染による欠勤がある。感染予防の効果も一時的には得られることから2)、感染拡大があった場合に4回目の接種は方策としてできるようにしておく必要があるのではないか。また、働く人の健康を考える産業保健の観点からも、4回目の接種は不要として職員に業務をしていただくことが果たしてできるだろうか。

自治体において、希望すればそれほど待たずに接種できる体制はまだ維持されており、また、期限切れワクチンの廃棄のニュースもある。その中で、感情的にも接種をしたいのにできないという医療従事者などの声はネット調査などにもみられている。

60歳未満の医療従事者、介護労働者を接種の対象とするなら、次は高齢者と同居する方など対象者の議論は広がる可能性がある。また、オミクロン株に対応したワクチンの開発も進み、それが日本でも入手できるようになった場合にどうするかなど、応用問題も続く。

まずは、昨年経験した夏場の流行が、今年はどうなるのか。そしてこの冬がどうなるのか。BA5などの変異ウイルスが主流になるのかなど不確定なことが多い中で、4回目のワクチン接種を医療や介護に関わる方が接種できるには制度をどうすればいいのか、早々に議論する必要がある。

【文献】

1)Regev-Yochay G, et al:N Engl J Med. 2022;386(14):1377-80.

2)Bar-On YM, et al:N Engl J Med. 2022;386(18):1712-20.

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

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