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新興感染症・再興感染症,輸入感染症[私の治療]

No.5123 (2022年07月02日発行) P.39

松山重成 (兵庫県災害医療センター救急部部長)

島津和久 (兵庫県災害医療センター救急部副部長)

登録日: 2022-06-30

最終更新日: 2022-06-29

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  • 新興感染症とは,「過去20年以内に増加したか,今後増加の恐れがある感染症」とWHOが定義している。代表的なものとしてエボラウイルス感染症,高病原性鳥インフルエンザ,重症急性呼吸器症候群(SARS),中東呼吸器症候群(MERS),新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などがある。再興感染症とは,「既知の感染症で一時期は減少したが,最近,注目されるようになってきた感染症」の総称で,結核,髄膜炎菌感染症,A型肝炎などがある。輸入感染症とは,国内では流行していない感染症で,海外から国内に持ち込まれる感染症のことを指す。近年のグローバル化,インバウンドの増加により輸入感染症の危険も高くなっていくものと思われる。代表的なものにデング熱,ジカウイルス,マラリア,腸チフス,パラチフスなどがある。
    新興・再興感染症は輸入感染症と重なるものも多く,国内で蔓延している状況でなければ輸入感染症と診断アプローチが似ることも多い。ここでは全体の診断の概要について述べ,個々の疾患の詳細は割愛する。

    ▶病歴聴取のポイント

    【海外渡航歴】

    一般的な病歴聴取に加え,海外渡航歴を聴取することはこれらの感染症診断に有用である。渡航地を聴取できれば,厚生労働省検疫所(FORTH)のウェブサイトなどで,その地で流行している疾患を参考にすることができる。

    【曝露歴】

    エボラ出血熱,SARS,MERS,COVID-19,結核などのヒト-ヒト感染を起こす感染症では,周囲に同様の症状を呈していた人と接したかを聴取することが手がかりとなる。デング熱,ジカウイルス,マラリアは蚊を介して感染し,高病原性鳥インフルエンザはウイルス感染した鳥から感染する。狂犬病は犬だけでなく,キツネ,コウモリ,アライグマなどからも感染するので,動物による咬傷歴の聴取は重要である。

    【潜伏期】

    潜伏期はエボラ出血熱では2~21日,SARSでは2~10日,MERSでは2~14日,デング熱では3~14日,ジカウイルスでは3~12日,マラリアでは7~21日と感染症によって様々である。中には腸チフス,パラチフスのように潜伏期が最長30日の長期に及ぶものもある。なお,COVID-19では最大14日間を潜伏期とし,経過観察期間としている。滞在期間と潜伏期がわかれば,ある程度疾患を絞り込むことが可能である。

    上述のような聴取を行い,ある程度の疾患を絞り込んだ上で緊急を要するものかの判別を行う。

    緊急を要するものとしては,エボラ出血熱,マールブルグ病などの1類およびMERS,鳥インフルエンザなどの2類感染症は直ちに保健所に連絡し,感染症指定医療機関への転送を行う。転送までの間も患者との接触は最低限とする。

    ▶バイタルサイン・身体診察のポイント

    発熱,咳,嘔気・嘔吐,下痢など感染を疑う所見を呈するものもあるが,特異的でないものも多い。身体所見だけで判断するのは難しいことが多く,病歴と検査を組み合わせて診断を行う。特異的なものとしては,ジカウイルスにおけるギラン・バレー症候群の合併,デング熱における重症化の警告症候(腹痛,圧痛,持続性嘔吐,粘膜出血,脱力,季肋下2cm以上の肝腫大),腸チフス・パラチフスにおけるバラ疹などがある。皮疹の性状や分布が診断の助けになることもある(水疱:水痘,帯状疱疹。斑状丘疹:風疹,麻疹,デング熱,伝染性単核球症など)。黄疸も外表からとらえられる所見のひとつである(マラリア,伝染性単核球症,腸チフスなど)。

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