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(3)分子標的薬の有害事象 [特集:抗癌剤の副作用対策]

No.4823 (2016年10月01日発行) P.41

門倉玄武 (日本医科大学武蔵小杉病院腫瘍内科)

登録日: 2016-10-03

最終更新日: 2016-10-06

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  • 分子標的薬は,従来の殺細胞性抗癌剤とは異なる,特徴的なプロファイルを持つ有害事象が認められるため注意を要する

    皮膚障害は,EGFR経路を阻害しうるセツキシマブやパニツムマブなどの抗EGFR抗体による代表的な有害事象である。投与初期に生じるざ瘡様皮疹は,皮膚の保湿,ステロイド外用薬の塗布により対処する

    薬剤性肺障害の原因薬剤としては,EGFR-TKIやmTOR阻害薬などがある。基本的な治療方針は,被疑薬の中止や呼吸を中心とした全身管理,ステロイドの投与である

    血栓症の原因薬剤としては,ベバシズマブやパゾパニブ塩酸塩などが挙げられる。基本的な治療方針として,CrCl 30mL/分以上であれば,初期の導入治療および維持治療いずれにおいても低分子ヘパリンの投与が最も推奨されている

    1. 分子標的薬を使用するにあたって

    分子標的薬は細胞の増殖シグナルを標的とするため,従来の殺細胞性抗癌剤よりも高い選択性が期待され,当初,有害事象は軽微であると予測されていた。しかし,薬剤が標的とする分子は正常細胞の分化誘導にも関連しており,実際は,殺細胞性抗癌剤とは異なる特徴的なプロファイルを持つ有害事象が認められた。したがって,分子標的薬を使用するにあたっては,それによる有害事象のマネジメントにも精通している必要がある。本稿では,分子標的薬の使用による代表的な有害事象を概説する。

    2. 分子標的薬によって起こる主な有害事象

    1 皮膚障害

    EGFRは皮膚に広く分布するため,皮膚障害は,EGFR経路を阻害しうるセツキシマブやパニツムマブなどの抗EGFR抗体による,代表的な有害事象である。ゲフィチニブ,エルロチニブ塩酸塩,アファチニブマレイン酸塩などのEGFRチロシンキナーゼ阻害薬(EGFR-TKI)も皮膚障害を生じるが,一般的に抗EGFR抗体より症状は軽いとされる。

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