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【識者の眼】「『この感染対策は止められないのか? あれは再開できないのか?』のために」和田耕治

No.5119 (2022年06月04日発行) P.57

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2022-05-25

最終更新日: 2022-06-01

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新型コロナウイルスに対する感染対策を見直すべき時期にある。ここでは市民や事業者が、「この対策を止められないか?」、または「これは再開できないか?」と考えた時の進め方について取り上げる。

まず取り組みたいのは、感染対策として現在行っていることを書き出してみる。その上で、それぞれを誰の(自分、同僚、顧客など)どのような感染対策のためにやっているのか、「目的」や「期待する効果」を書き出してみる。またそれを止めた場合にどういう感染が起こりえるのか、そしてそこにかかっている労力やコストを考えてみたい。

マニュアルやガイドラインがあれば、3種類の蛍光ペンを持って、引き続き継続する基本的感染対策(緑色)、地域で感染が拡大した際に追加でやること(黄色)、感染がさらに拡大した際にできるならやること(赤色)などに色分けしてもよい。その上で赤色などは止めていいか相談してはどうか。

イベントなどの実施にも二の足を踏んでいることもある。できればリスクが低めの屋外でのイベント(飲食などが比較的限られている)から始めていくのはどうであろうか。2〜3段階などを経て、職員や顧客も徐々に慣れていくようなことは大事であろう。ただ、大勢が集まる立食パーティなどは引き続き要注意である。地域住民による夏祭りや盆踊りなどはできるだけ再開を目指していただきたい。

不要な対策として、接触感染対策としての拭き取りがある。お客さんが帰ったあとに客用の椅子を拭き取るなどの作業がある。これは感染対策としては手間の割に効果も少ない。これをある場で指摘したところ、いろいろ話をした後に、ぽろっと、「この作業をしていることで少し時給も高くなっている」という話を聞いた際には、その作業をやめることが様々に波及することを知らされた。

屋外でのマスクの着用について政府からも細かい内容が示された。あくまで、これはきっかけであり、その他に、「この作業や対応は感染対策として意味があるの?」ともう一度考えていかなければならない。マスクだけで、一件落着ではない。

対策を止めることで何か起きた場合の責任問題というのは確かに難しい。ただ、このように少し落ち着いている時期だからこそ、改めて考えてみることをぜひともお願いしたい。中長期的には新たな変異株、そしてこの冬がどうなるかなど課題はあるが、現場での前向きな展開を我々医療者は応援していきたい。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナウイルス感染症]

【関連動画】
討論Pro×Pro「新型コロナ対策 出口戦略のシナリオ」(和田耕治×今枝宗一郎)

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