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脳腫瘍[私の治療]

No.5115 (2022年05月07日発行) P.47

田中將太 (東京大学医学部脳神経外科講師)

齊藤延人 (東京大学医学部脳神経外科教授)

登録日: 2022-05-08

最終更新日: 2022-05-02

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  • 脳腫瘍とは,頭蓋内に発生する腫瘍の総称で,発生頻度は人口10万人に対し10~15人程度である。主な脳腫瘍の発生頻度は,神経上皮性腫瘍(神経膠腫等)25.6%,髄膜腫23.8%,下垂体腺腫16.8%,神経鞘腫8.7%,原発性中枢神経系リンパ腫4.8%である1)。悪性度によってWHO gradeⅠ~Ⅳに分類され,grade Ⅳが最も悪性である2)3)。腫瘍の悪性度を判断して,経過観察,手術,化学療法,放射線治療などが選択される。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    腫瘍の存在部位により,運動麻痺,言語障害,視野障害などの巣症状を呈する。大脳半球に発生した腫瘍では痙攣発作をきたすこともある。腫瘍が大きくなり脳を圧迫したり,脳浮腫が進行したりすると,頭蓋内圧亢進症状を呈する。頭痛,嘔気・嘔吐,うっ血乳頭が三主徴である。さらに進行すると脳ヘルニアを起こし,意識障害,呼吸異常,瞳孔異常,運動麻痺などをきたし,生命の危険が迫る。

    【検査所見】

    多くの脳腫瘍はCTやMRIでよく描出され,造影剤による増強効果がある。MRIのT1強調画像では低信号,T2強調画像で高信号であることが多い。悪性の場合には周辺に広範な脳浮腫像を伴うことが多い。

    核医学検査は腫瘍の質的診断に役立つことが多い。特に糖代謝の指標となる18F-FDGを用いたFDG-PETは,悪性脳腫瘍の鑑別に有用である。

    腰椎穿刺による髄液検査・細胞診が有用なこともあるが,脳腫瘍による頭蓋内圧亢進が疑われる場合には,禁忌である。

    ▶私の治療方針・治療の組み立て方

    脳腫瘍が疑われたら,速やかに脳神経外科医にコンサルトする。

    脳腫瘍は約150種類あり予後も様々であるので,まず画像検査により診断をつけ,経過観察か治療かを選択する。治療の基本は開頭術による腫瘍摘出であるが,腫瘍型によっては化学療法や放射線治療の効果が期待できるため,生検術にとどめるべきものもある。

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