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【識者の眼】「重症度、医療・看護必要度は必要か」武久洋三

No.5117 (2022年05月21日発行) P.66

武久洋三 (医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)

登録日: 2022-04-22

最終更新日: 2022-04-22

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2022年度診療報酬改定は、それまで中医協で検討されてきた内容から見ると一歩進んだ形になった。各方面から「反対」というより「怨嗟」のつぶやきが聞こえてくる。私としては「良くやった!」と評価したい。今まで全般的にあいまいに設定された報酬の間延び部分で何とか経営できていた病院も少なくないはずだが、今回その間延び部分がすっきりなくなってしまった感がしてならない。

そして従来、急性期医療の指標であった「重症度、医療・看護必要度」(以下、必要度)の変革である。以前から急性期病院の急性期度を測る基準として用いられ、急性期病院は必死にそのレベルを維持するために汲々としていたのだ。どんな患者でも簡単に装着できるモニターを多用してきた現場に対して、疑惑の目を向けていた当局の思い切った決断だ。しかし、この基準項目をよりブラッシュアップしていこうという雰囲気は感じられない。診療報酬改定を担当する厚生労働省保険局医療課は、どうやらこの「必要度」に引導を渡したい気持ちがあるようだ。急性期病院の先鋒に急性期充実体制加算という加算を新設し、高度急性期と従来の「なんちゃって急性期」を大胆に分断しようとしたことからも明らかなように、急性期の条件に手術件数等の実績を重視したのである。しかも、この急性期充実体制加算を算定する要件として「必要度」を要求しなかったのだ。

総合入院体制加算算定病院については、地域の最後の砦、安心のよりどころとしている。しかし本物の急性期に特化した病院については、「必要度」を無視したのだ。この1点のみで今回の厚労省改定チームの「必要度」に対するスタンスを読み取ることができる。医療分野では病状の深刻度、重症度が必要なのである。今まで「必要度」を使い続けていたことのほうが不思議である。この「必要度」を慢性期病院の入院患者に当てはめても該当患者割合は高い。しかし、あくまでも急性期医療における指標でなければならない。慢性期医療の指標と大きく重なるべきではない。

急性期医療必要度は正しくその病院における急性期機能を示すものでなくてはならない。もはや今後日本の急性期医療に現在の「必要度」は必要とされなくなり、新しい急性期医療必要度に変わるのも時間の問題である。高度急性期病院を明確化し、「なんちゃって急性期」を厳密に地域包括ケア病棟に集約していこうとする試案は、確実に医療の現場に受け入れられてゆくであろう。

武久洋三(医療法人平成博愛会博愛記念病院理事長)[診療報酬改定][急性期医療]

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