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【識者の眼】「各診療科において公衆衛生の視点を持つことの価値と重要性」重見大介

No.5098 (2022年01月08日発行) P.60

重見大介 (株式会社Kids Public、産婦人科オンライン代表)

登録日: 2021-12-10

最終更新日: 2021-12-10

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2020〜2021年にかけ、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックが世界中を襲った(現在でも継続中である)。感染対策や数理モデリング、ワクチンに関する研究の疫学・統計学的手法に大きな注目が集まり、公衆衛生(Public health)の重要性に改めて気付かされたのではないだろうか。

日本では、医学教育の中で公衆衛生を学ぶ機会はあるものの、それが各診療科における臨床現場へ十分に応用されているとは言い難い。欧州や米国では公衆衛生を学ぶための大学院が数十年前から確立され、臨床医であっても専門スキルを取得するために非常に人気の高い学問のひとつとなっており、修士号(Master of Public Health:MPH)は高い価値を有している。一方で、日本ではMPHの存在さえ知らない臨床医が多く、「各診療科と公衆衛生は別物」という認識を持っている医師が少なくないのではないだろうか。

公衆衛生の目的は、人々の生命や健康を守ることであるため、社会や集団を対象に様々な曝露や介入を調査・研究し、有効な社会実装を検討する。この考え方は各診療科それぞれにおける社会的課題に通ずるものであり、患者個別の治療と両輪を成すものだと言えるだろう。と同時に、臨床医が公衆衛生を学びこの視点を持つことで、視野が広がり大きな社会的課題の解決につながる可能性を高められる。また、エビデンスの正確な解釈は実地臨床にも大いに役立つものと考えられる。なお、MPHプログラムでは、①疫学、②生物統計学、③保健医療政策・管理学、④環境保健学、⑤健康行動学、からなる基本5領域を体系的に学ぶことが国際的に求められており、臨床医として働いているだけではこれらを体系的に学ぶことは難しいだろう。

私が専門とする産婦人科領域では、2020〜2021年にかけて

・COVID-19パンデミック下における妊産婦への感染による影響やワクチン接種

・COVID-19パンデミック下における女性のうつ病や自殺者の増加

・本邦におけるHPVワクチンの積極的勧奨の再開決定

・経口妊娠中絶薬の国内承認の可能性

・不妊治療の保険適用

などが社会的課題に関わるテーマとして話題になった。

産婦人科領域は特に社会的課題と密接に関わることが多いように感じられるが、各診療科にこうした課題は必ず存在しているはずである。

このCOVID-19パンデミックを契機に、各診療科に携わる医療従事者が公衆衛生の視点を持つことの価値と重要性が日本でも広く認識されると嬉しく思う。

重見大介(株式会社Kids Public,産婦人科オンライン代表)[公衆衛生][社会的課題]

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