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特集:頭皮の痒み・炎症・フケ治療─治療法×治療薬

No.5094 (2021年12月11日発行) P.18

安部正敏 (札幌皮膚科 クリニック院長 )

登録日: 2021-12-10

最終更新日: 2021-12-08

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1993年群馬大学医学部卒業。米国テキサス大サウスウェスタンメディカルセンター細胞生物学部門研究員などを経て,2018年から現職。著書に『ジェネラリストのためのこれだけは押さえておきたい皮膚疾患』『憧鉄雑感』など。

1 頭皮の痒み・炎症・フケ治療とは何か?
・一言に頭皮の痒み・炎症・フケといっても,そもそもこれらの症状を呈する皮膚疾患は山ほどあり,鑑別しなければならない。
・最も多くみられるのは“湿疹・皮膚炎群”であるが,その中には,アトピー性皮膚炎,接触皮膚炎,急性湿疹,慢性湿疹,脂漏性皮膚炎など様々な病態が含まれる。
・尋常性乾癬など湿疹以外の疾患もみられることから,正しくアセスメントを行い,診断を確定した上で治療を行う。

2 治療法の選択
・最も多くみられる疾患である湿疹・皮膚炎群に対しては,副腎皮質ステロイド外用薬が第一選択となる。瘙痒が強い場合,必要に応じて抗ヒスタミン薬内服なども行う。
・尋常性乾癬においては,副腎皮質ステロイド外用とともに活性型ビタミンD3外用が奏効する。近年では両者の配合薬が使用可能となり,有用性が高い。
・脂漏性皮膚炎においては,その発症メカニズムから抗真菌外用薬が有用である。ただし,本疾患は皮膚表在性真菌感染症ではないため,生活指導には十分注意する。
・高齢者やアトピー性皮膚炎患者は,脂漏部位である頭皮でも乾燥傾向となる場合もあるため,適時保湿薬を使用する。

3 基剤の使い分けの注意
・頭皮は当然毛髪があるため,外用が比較的困難な部位であり,アドヒアランスが低下する傾向にある。この場合,漫然と油脂性基剤である軟膏で治療するのではなく,様々な基剤を駆使して治療に当たるべきである。
・ただし,基剤によっては使用してはいけない皮疹があるため,皮疹のアセスメントができない場合,特殊な基剤の使用は避けるべきである。

4 基剤の使い分けの実際
・基本は副腎皮質ステロイドローションである。
・その他,軟膏,クリーム,ゲル,フォームなどがあり,患者の好選性を考慮して選択する。成人例においては副腎皮質ステロイド外用薬が第一選択となる場合が多い。ただし,病変部位に応じた強さの使い分けが必要である。

5 日常生活指導
・患者によっては,一時的な瘙痒軽減を狙ってトニックシャンプーを過剰に使用したり,洗髪を行わないなど,誤ったスキンケアがみられる。
・外用アドヒアランスの悪い頭部病変において,日常生活習慣に治療を組み込むことは有用であり,副腎皮質ステロイドシャンプーの使用なども積極的に考慮すべきである。

伝えたいこと…
頭部が痒いからといって,即湿疹と判断し,副腎皮質ステロイド外用を行うのは避けるべきである。鑑別疾患を挙げ,皮疹をアセスメントした上で,外用アドヒアランスを向上させる治療法を選択する姿勢が重要である。

1 頭皮の痒み・炎症・フケ治療とは何か?

頭皮の痒み・炎症・フケ治療を理解するためには,まず頭皮で起こる種々の皮膚疾患を理解しなければならない。中でも湿疹・皮膚炎群は最も患者数が多く,ありふれた皮膚疾患であり,皮膚科専門医以外も遭遇することが多いと思われる。まず,頭部病変をみた場合に鑑別すべき疾患を挙げる(表1)。
 

(1)湿疹・皮膚炎群

そもそも,“湿疹”とはきわめて当を得た病名である。“湿った発疹”であるから“湿疹”なのであるが,まさにこの“湿”の一文字にこの疾患のエッセンスが凝集されていると言っても過言ではない。皮膚科学においては“湿疹・皮膚炎群”とひとまとまりにされることが多いが,これはそもそも同じ病態を指す。しかしこれまでの慣例から,“接触皮膚炎”とは言うが“接触湿疹”とは言わない。“アトピー性皮膚炎”と言うが“アトピー湿疹”は一般的ではない。“湿疹”は臨床所見を忠実に表現した病名であり,他方“皮膚炎”は病態論からみた病名である。

湿疹の定義は,いわゆる“湿疹三角形を満たすもの”と考えると理解しやすい(図1)。さらに,この要点である①瘙痒,②多型性,③点状状態,の3点を満たすことが重要である。つまり,“痒い”というきわめてありふれた主訴は必須と考えてよいが,それだけで湿疹と診断することはできない。多型性とは,多数の皮疹が同時に存在することであり,点状状態と表現される細かい皮疹,つまり丘疹や小水疱などからなる 状態である(図2)。この小水疱は漿液性丘疹と呼ばれ,特に湿疹の原因として多い接触皮膚炎においては非常に重要な所見である。これは,皮膚炎によりリンパ球をはじめとする炎症細胞が表皮内に浸潤することにより,表皮細胞がバラバラになってしまう結果,生ずる発疹である。当然,漿液性丘疹は容易に破裂してしまうため,表面が湿潤した状態,つまり“湿疹”となるのである。

接触皮膚炎も頭部ではよくみられる疾患である。中でも,2015年に消費者庁から“毛染めによる接触皮膚炎”の注意喚起が出されたのは,記憶に新しい。接触皮膚炎を診断するためには“パッチテスト”を行う。驚くべきことに,毛染めを行う前には自己パッチテストが推奨されているようであり,美容室でもパッチテストを行う場合があるという。しかし,これは一般市民にも正しく理解させる必要があり,素人が誤ったパッチテストを行うと,それにより感作が成立し,遅延型アレルギー(Ⅳ型アレルギー)反応が起こってしまう危険性がある。

そもそも接触皮膚炎には,「一次刺激性」「アレルギー性」の2種類が存在する。一次刺激性接触皮膚炎は,アレルギー機序を介さない皮膚炎であり,原因物質の非常に強い刺激により起こる皮膚炎である。刺激により生ずることから,初回から誰にでも生ずる皮膚炎である。他方,アレルギー性接触皮膚炎は,Ⅳ型アレルギーによるもので,初回の接触では皮膚炎は生じない。免疫学的に感作が起こり,以降同物質の接触により皮膚炎が惹起される(図3)。 

   
毛染めでは,パラフェニレンジアミンなどの酸化染料が高率に接触皮膚炎を惹起する。パラフェニレンジアミンは最近,それを含むレディメイドのパッチテスト試薬が使用可能となったため,皮膚科で容易にパッチテストができるようになった。接触皮膚炎の唯一の治療法は原因除去であり,漫然とした対症療法を行うべきではない。ちなみに,酸化染料を使用する製品は“染毛剤”に分類され,ヘアマニキュアは“染毛料”である。

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