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糖尿病合併症の包括的管理 [内科懇話会]

No.4814 (2016年07月30日発行) P.46

片山茂裕 (埼玉医科大学かわごえクリニック院長)

演者: 宇都宮一典 (東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授)

登録日: 2016-10-16

最終更新日: 2017-01-23

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  • 【司会】 片山茂裕(埼玉医科大学かわごえクリニック院長)

    【演者】 宇都宮一典(東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科主任教授)

    インスリン抵抗性状態で細小血管障害を生ずる

    血管内皮機能の低下がインスリン分泌障害,インスリン作用低減をもたらす

    糖尿病合併症の管理には血糖・血圧・脂質を含めた包括的管理が重要

    糖尿病合併症を包括的に管理する意義

    2型糖尿病はインスリンの作用低下・不足によって起こる一連の代謝症候群で,インスリン分泌不全とインスリン抵抗性状態が原因です。
    高血糖の発症によって糖尿病を診断していますが,インスリンは血管への直接作用を持つので,β細胞量が半減して高血糖状態になる前に,諸臓器の血管には様々な障害が生じています。したがって,合併症の抑制には,インスリンの作用が血管に不足する病態を包括してとらえることが必要です。

    内臓脂肪型肥満がインスリンバランスに影響

    マクロファージが起こす炎症の機転が,単なる肥満から悪性の肥満に変化する大きな要因を担っていると考えられています。内臓脂肪からはTNF-α,レジスチンなどのインスリン抵抗性分子が出てインスリンの作用を妨害し,一方でインスリン感受性分子であるアディポネクチンは低減してしまいます。
    脂肪細胞はエネルギーを蓄えるのみならず,レプチンを介し直接的な作用でT細胞を賦活化し,マクロファージを生じて炎症を起こします。脂肪組織はサイトカインを出して自然免疫を調整する重要な場であり,非常に多彩な機能を担っています。これらのバランスの崩れがインスリン抵抗性状態をもたらし,動脈硬化の重要な基盤病態を形成するということから提唱された概念がメタボリックシンドロームです。

    心腎連関,インスリン抵抗性と糖尿病性腎症との関係

    糖尿病性腎症の生命予後が悪い原因は,それが心血管疾患のリスクとなり,心血管イベントによって起こる死亡をもたらすからです。
    糖尿病性腎症の年次進行率と死亡率をみた英国の2型糖尿病に対する介入研究であるUKPDSのサブ解析では,「糖尿病性腎症なし」から早期腎症,持続性蛋白尿,腎不全に至るまで,段階ごとに悪化する患者は年間に2~3%です。一方,心血管疾患による死亡率は,腎症のない例は1.4%,早期腎症では倍加して3%,腎不全状態に至ると20%近くが心血管疾患で死亡しています。糖尿病性腎症は病期の進展が強い心血管疾患のリスクになり,死亡をもたらしていることを如実に示しています。これは日本人でも確認されています。
    最近,「心腎連関」という概念がCKDにおいて提唱されました。糖尿病性腎症では,その関係はきわめて深刻で,基盤病態の解明が急がれます。最近,糖尿病性腎症とインスリン抵抗性の関係が注目されています。香港レジストリーという疫学研究で,2型糖尿病を対象にCKDの累積発症率をみると,内臓肥満,高血圧,高血糖,脂質異常症など症候を有するほどCKDの累積発症率は明らかに増えています。メタボリックシンドロームのようなインスリン抵抗性によって起こる症候を併せ持つことが,腎臓に対する進展増悪に関与することを示す成績と考えられます。

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